今なお続く日本の「失われた30年」。経済は停滞(低成長)したまま、実質賃金も伸びていない (下表のとおり)。
私たちの未来を成長の軌道に乗せるためには、やはりイノベーションDX
が必須だ。
他に選択肢はあるのだろうか? デジタル後進国になってしまった日本に、だれもが
危機感を感じているのではないだろうか?
※DX(デジタルトランスフォーメーション)は、国の重要政策となっている(デジタル庁/経産省/総務省

 

実質賃金グラフ
実質賃金(マンアワーベース)の国際比較(厚生労働省HP「経済指標の国際比較」より抜粋) ※「国民経済計算」に基づく賃金・俸給を雇用者数及び雇用者一人当たり平均労働時間で割り、算出してたもの

 

「人口減少」「少子高齢化」「人手不足」といった日本社会の課題は、イノベーションとDXによる効率化・労働生産性の向上なくしては解決できないと、だれもが理解している。気候変動問題への対処も同様だ。

長岡市でも、産業界のDX推進と、若者や女性、外国人材が能力を十分に発揮できる働く場の創出に力を入れ、早くから「長岡版イノベーション」を進めてきた。しかし、急速に進むデジタル化の波〜変動期〜を乗り越えるのは大変だ。何ソレ??? となりがちなカタカナ言葉ばかり出てくるので、正直、ため息が出ることも多い。

その一方で、外来語を自家薬籠中のものとして扱う日本語のスゴ技、に感心もする。デジタルの流れも躊躇することなく取り入れ、産業と生活を変革していきたいところだ。もちろん、高齢者などのデジタル弱者へも目を配り、支援や啓発をしていきたい。産官学民の総力を挙げて、あらゆるシーンでフォローしてゆくマインド(この助け合い精神を私は雪国マインドと呼んでいる)が、“だれ一人とり残さないデジタル化”には必要だ超高齢社会の明日を切り拓くために、デジタル格差のない社会をめざしていきたい──。

ということで今回は、進行形「長岡版イノベーション」の現在地を 「まとめ情報 」でお伝えしよう。

 

■長岡版イノベーションの基本方針

今年4月、長岡市イノベーション推進本部会議で長岡版イノベーション基本方針を改めて下記のとおり定めた。

(3つの視点)
 1. デジタル化や先端技術の導入等による変革の実現(DX等)
 2. 女性活躍の推進と多様性(ダイバーシティ)の確保
 3. あらゆる分野で長岡モデルを創造し、新しい価値を創出

4本柱が支える長岡版イノベーションでウェルビーイングを実現


(4つの柱)
 1 産業振興・起業の促進

 2 人材の育成・活用
 3 市民生活の向上
 4  行政事務の効率化 

 

 
■ 4本柱で施策を推進

1 産業振興・起業の促進
リーンローンチパッド(アイデア発想中)

<地域産業の担い手となる未来人材の育成>

若者の起業・創業支援策として、4大学1高専と連携したNaDeC構想に基づくファーストペンギンプログラムや、若者がチャレンジできる環境整備とアントレプレーナーシップ(起業家精神)の醸成、起業の手法を学ぶリーンローンチパットプログラム、民間のスタートアップ拠点づくりへの支援などにより、平成30年の開始からこれまでに18人の学生起業家が誕生している(過去のブログ)。

<地場産業の振興>
長岡産業活性化協会NAZEナゼと連携してデジタルツールを使いこなす人材を育成するNAZE学園の開校や、技術高度化とデジタル化を支援するイノベーション加速化補助金などを通じて、市内のものづくり製造業等のDXを促進してきた(過去のブログ)。

バイオから新たな産業の創出につながる動きも出てきている。
先月、長岡市と国内最大級の公的研究機関である産業技術総合研究所(産総研)長岡技術科学大学の3者で長岡・産総研 生物資源循環 ブリッジ・イノベーション・ラボラトリ(NAGAOKA・AIST-BIL)ミライエ長岡に開設した(過去のブログ)。今後、バイオを入口として、長岡の強みであるものづくり産業と結び付け、スマート農業の推進(過去のブログ)とともに地域経済を元気にしていく。

 

2 人材の育成・活用
外国人留学生向けに行った企業見学ツアー

イノベーション・DX人材を、いかに生み出し供給していくか、これが長岡発展の大きな課題だ

・若者が働きたくなる魅力的な仕事や環境をこの地域に生み出し、集積させることが求められる。
 各企業へのインターンシップを増やし、NAGAOKAながおか WORKERワーカーのような多様な働き方を展開中だ。(過去のブログ

・女性はもとより、だれもが安心して働き、活躍できる職場環境づくりが急務だ。 市内221社が参画するながおか働き方プラス応援プロジェクトで、職場環境の改善を促進してきた。(過去のブログ参照)

・フルタイム就業が難しい人に向けて、手軽に求職とマッチングを行うながおかマッチボックスを導入。3か月で260人以上の就労が実現した。(過去のブログ

外国人材については、市内大学の留学生やベトナム、モンゴル、キルギスなどの若者の、インターンシップを通じた市内企業への就業を進めている。長岡は多年にわたって多文化共生に取り組んできた。外国人材の生活環境を向上させ、多様な人材が長岡の産業を支える仕組みを構築していきたい。

3 市民生活の向上

産業分野にとどまらず、生活のあらゆる場面、あらゆる商品・サービスの提供において、利便性向上が望まれている。イノベーションが更なる利便性をもたらせば、多忙な現代人ももっとゆとりのある生活ができるはずだ。

<医療と福祉>
多様化・複雑化するニーズに対応が追いつかない状況だが、国民負担をこれ以上増やすことはできないので、新たな発想や技術・手法によるイノベーションで乗り越えていきたい。

オンライン診療車で
移動診療車でのオンライン診療。看護師1人が常勤し、医師の診察をモニターを通して受けられる。(山古志地域で)

長岡でも、中山間地域の医師不足が進んでいる。今年の1月からオンライン診療を山古志診療所で試行的に開始した(過去のブログ)。
さらに、今月からはテレビ会議システムや遠隔聴診器などを備えた移動診療車を、県内で初めて導入(写真)。患者の移動負担の軽減と、受診機会の確保に効果が期待できる。今後は、山古志地域での試行結果を検証し、他の中山間地域などへ展開していきたい。

<子育て>
プッシュ型の情報発信や成長記録の一元管理等を望む声が多かったことを受けて、デジタルツールの活用を進めてきた。ながおか子育てアプリ母子モぼしも」は、子育て情報の受け取りや予防接種の管理、子どもの成長の確認、振り返りをスマートフォンなどで簡単に行えると、大変評判が良い。また、子育ての駅のインターネット利用受付もご好評いただいている。

 

4 行政事務の効率化

市役所の事務事業の見直しとDXによる効率化、そして行政サービスの向上は、長岡版イノベーションの最重要課題である。

国が自治体DX推進計画を策定する以前から、長岡市では、デジタル技術やAI等の活用した業務効率化に取り組んできた。全国に先駆けて、定型的な事務を自動処理するRPA(ロボットによるPC等の業務の自動化)や紙資料をデータ化するAI-OCRディープラーニングを用いた高精度の光学文字認識)で、100業務で作業時間を年間18,000時間以上削減するなどの効果をあげている(過去のブログ①2020, ②2023  その他外部リンク)。

生成AIセミナー(清水さん)
清水さんの講演『長岡は生成AIで進化する』


今年度は、ChatチャットGPTなどの生成AIを活用するため、長岡出身で日本を代表するプログラマーの清水亮さんを講師に招き、市民向けのセミナーと市の職員研修を実施した。

また、電話による健康相談にAIを活用した支援システムを県内で初めて導入するなど、業務の効率化とサービスの向上にも取り組んでいる。

 

今年11月から電話健康相談にAIを活用して業務支援する県内初の取り組みを始めた。現在、音声を文字データに変換する部分にのみAIが導入されているが、今後は蓄積されたノウハウや相談記録をもとに文字データを要約して自動で記録票を作成するなど、相談業務の質の向上と効率化を期待している。

 

ミライエ長岡をオープンイノベーションの拠点に

私がコロナ禍前に視察をして目の当たりにしてきたのは、『アメリカのシリコンバレーや中国の深圳シンセンといった都市に、世界中から多様な人材や投資家が集まり、日々、デジタル技術による新たなビジネスモデルや、新しい製品・サービスが生み出している姿』だ。

「これは、長岡でも可能だ」と率直に思う。『米百俵の精神が引き継がれてきたまち』、『雪国マインドで協働するまち』なのだから。

4大学1高専やモノづくり産業が集積している強みを活かし、イノベーションの起こるまち=イノベーションによって産業が発展し、市民生活が豊かになるまちを目指すべく「長岡版イノベーション」では、デザイン思考、起業家精神、女性活躍やダイバーシティなどの取り組みを強化し、施策97事業を展開しているところだ。

 

昨年3月、内閣府東京大学CREI日本初の「イノベーション地区」創設を目指す研究連携協定を締結し、担当大臣からも「イノベーターたちが集い、交流できるコワーキングスペースの設置など、先駆的な取り組みを行っている」とミライエ長岡へとつながる産学協創の取り組みを高く評価していただいた(過去のブログ)。

ミライエはオープン4か月で来館者は16万人を超え、新しい互尊文庫を中心に子どもから高齢者まで幅広い年齢層の方から利用いただいている。ここに、活動拠点であるNaDeCナデック BASEベースをはじめ、スタートアップやベンチャー企業、研究開発機関等も入居し、さまざまな企業人や起業家、研究者が活動している。さらに、ミライエ周辺で民間投資による企業進出も相次いでいる。

注目すべきは、大勢の市民のみなさんがミライエに足を運んでくれる事実。時代を捉えようとする長岡人らしい行動だと思う。頼もしいかぎりだ。

期待に応えるべく、今後もミライエを人材育成と産業振興、イノベーションの拠点として、全国、世界から多様な人材が集い、交流しながら、イノベーションを生み出す「開かれた場」にしていきたい。子どもから高齢者のあらゆる市民が、新しい知識や交流を求め、デジタルを使いこなす社会──デジタル格差のないまち──を速やかに実現し、持続可能で明るい長岡を協働&協創していこう! 
これからも、市民のみなさんのご協力をお願いします!

   関  連  記  事 :  ミライエ発、長岡版イノベーション  DX元年! 好調続く、企業誘致

 タイトル画像 : 
米百俵プレイス9階オフィスフロア進出企業の皆さん

左から、(株)YAZ・田中康之代表取締役CEO、(株)portia・里 陽平代表取締役、(株)アルプス技研・太田秀幸業務執行役員、(株)クロス・プロップワークス・渡邊純史代表取締役社長、(株)第四北越銀行・殖栗道郎取締役頭取、私、(株)第四北越銀行・宮越忠範専務執行役員、三菱電機冷熱機器販売(株)・和泉 洋新潟支店長、(株)アーク&パートナーズ・内藤 克代表取締役、(株)ZOOM・崎本大海広報部担当、(株)NEX-GEN・サンカラリンガム・ラジェシュクマル代表取締役