新潟県内で、医師不足が大きな課題となっている。

2020年末時点の人口10万人あたりの医師総数は218.2人と、全国で5番目に少ない。新しい指標である「医師偏在指標」では、なんと全国最下位だ(厚生労働省の調査結果)。

長岡市でも、主に支所地域において診療所の維持が難しくなりつつある。高齢医師の引退があっても新しい医師が見つからないのだ。地域から「かかりつけ医」がいなくなると住民の健康を守ることが困難になるため、地域医療を維持する取り組みが求められている。

※ 医師数の格差をより客観的実体的に表す指数


今回は、過疎地の地域医療を守る取り組みの紹介である。

 

■新体制では中央綜合病院がバックアップ

山古志診療所では、1月13日から新たな体制で診療が始まっている(1/10市長記者会見で発表)。昨年末での医師の退職を受け、長岡市医師会、基幹病院(長岡赤十字病院長岡中央綜合病院立川綜合病院)と協議を重ね、次のような診療体制を整えた。

<外 来>長岡中央綜合病院の内科・整形外科の医師が診察(週2日)
<往 診>医師会所属の医師が実施
<送 迎>虫亀診療所、種苧原診療所は休止し、山古志診療所への送迎車を市が運行

医師は中央総合病院から派遣され、これまでは内科医のみだった診療所に整形外科医による診察も加わった。総合病院である中央綜合病院のバックアップは頼もしい。もちろん、ICTもどんどん取り入れてゆく。

 

山古志診療所でのオンライン診療(1月30日)。今月、来月も実施の予定。
オンライン診療(中央綜合病院側)。医師はカルテの情報を基に診察を行う。

 

 

 

 

 

 

 

 
■オンライン診療の試行

 

山古志診療所の体制を整えるとともに、オンライン診療(試行)もスタートさせた。

オンライン診療の対象者は薬の処方のための診察が主となる。診療所へ来院すれば、ビデオ通話で中央病院にいる医師の診察を受けられるようになった。また、採血などの処置や薬の処方、会計は、従来どおり診療所の看護師・薬剤師が対応する。

初日はおよそ10名の患者が診療所を訪れ、モニター画面越しに診察を受けた。ビデオ通話に不慣れな方がいるのではとの心配もあったが、診療を受けた住民からは「医師が大きな声ではっきりと問診してくれた」「対面の時と同じように診察してもらえた」と、円滑な診察ができたことが確認できた。

 

特に通信環境の不具合もなく、今冬のような大雪の際も医療の提供が可能であることが確かめられた。今年度は月1回(2/27、3/30)の試行、医師・患者の聞き取りを経てオンライン診療の有効性と可能性を検証し、今後の展開につなげていく。

 

 

 

■ カギは「連携」と「ICT活用」

人口減少&高齢化はさらに進行し、医師の不足と偏在(都市部への集中)がさらに進むだろう。過疎地に住んで地域医療に専念してくれる医師を探すことは、今後一層困難となる。

これを乗り切るためには、長岡市域全体の医療連携と、遠隔医療などICTなど新技術の活用がカギとなる。すでに長岡市は、タブレット端末による医療・介護情報連携システム「フェニックスネット」を長岡市医師会と協力して進めてきた。

※2015(平成27)年に開始して以降、現在ではフェニックスネット登録者は1万人を超え、参加機関は病院・診療所・訪問看護・介護事業所など計267にのぼる

こうしたICTを活用した連携体制は長岡の強みであり、地域包括ケアや救急医療の分野にとどまらず、地域医療の確保でも生かすことができると考えている。

 

山古志診療所の取り組みやフェニックスネットの実績をもとに、また、新しい発想も取り入れながら「長岡版イノベーション」の一環として地域医療を支える体制の構築を進めていくので、各方面からご協力をお願いしたい。


   関  連  記  事 :
 フェニックスネット       

              
 タイトル画像:
 
山古志診療所の外来診療(1月13日)

長岡中央綜合病院の医師がローテーション体制で外来診療にあたる。この日は、長岡中央綜合病院 岩島明副院長があたった。