「地域活性化」は、市町村合併以来の長岡市の大きな政策課題の1つだ。

合併から18年、 中山間地域を中心に少子高齢化・人口減少が急速に進み 、地域活動やイベントを担う人材の不足が顕著になってきた。もっと外(地域外)の力を借りればいい、人を連れてくればいい、と考える人もいるかもしれない。しかし、外からの人を受け入れる余裕も力もなくなった──そのような地域が出てきた実態がある。

コロナ禍の3年間を経た今、新たな地域活動への転換が求められていることがはっきりしてきた。
今回は、地域活動の新しい形が動いている三島地域を紹介したい。

 

 

 

■ 三島は地域コミュニティ活動のさきがけ

 

三島地域は以前から、「越後みしま竹あかり街道」「全日本丸太早切選手権大会」「みしま西山連峰登山マラソン大会」など、里山の魅力を生かした大規模なイベントを地域の“住民力”で実施してきた。

支所地域の中で、最初にコミュニティセンターを設置(平成21年4月)したのが三島地域でもあった。平成23年2月に、多目的ホールや工作室などを備えた専用の施設が支所2階に完成し、サークル活動や各種講座など、地域のみなさん中心の活動が盛んに行われている。

三島支所(行政)とみしまコミセン(地域活動)が、一体となって活動できるよう設計された複合施設は、他の地域にとってのモデルケースとなってきた。トチオーレ、与板・川口の地域交流施設事業は、三島コミセンがお手本になっている。まさに、三島は、地域コミュニティ活動のさきがけ(先駆的存在)である。

 

ところが──

 

みしま西山連峰登山マラソン大会ラストイベント〜小学生対象の走り方教室で有森さんに指導を受ける子どもたち(令和5年5月27日 )

 

有力なイベントの1つであるみしま西山連峰登山マラソン大会が、本年5月の大会をもってラストラン、閉幕となった。運営の担い手不足などから、安全な大会運営が困難との判断によるもので、安全性を優先した苦渋の英断であったと思う。有森裕子さんが長らく特別ゲストとして参加し、三島地域はもとより長岡を代表するイベントだったため、惜しむ声が大変多かった・・・。


しかしながら、三島の地域活動が下火になっているかというと、さにあらず。さまざまな独自の取り組みが活発に行われている。

 

 

 

■若者と女性のアイデア、そしてデジタルで地域を元気に!

 

○「防火水そうではじまる」

新潟工科大の大学院生・北澤李緒さん(地元出身)の卒業設計「防火水そうではじまる」が昨年6月、日本建築家協会主催のJIA全国学生卒業設計コンクールで最高賞の金賞に輝いた。
住民同士のつながりが希薄になってきたと感じた北澤さんが、三島地域の地下に埋められた防火水そうの上部空間(平らなコンクリートの上)を「小さなコミュニティの場」にしようと、その場所の特性に合わせた建物の設置を提案し、評価されたものである。

この考えに地元の皆さんが共感し、実際に上岩井地区につくってみようとワークショップ(タイトル画像)を行い、ベンチやかまど、カフェなどのアイデアから構想を練った。
今後、構想を基に住民の皆さんと製作を開始する予定だ。防火水槽は三島地域に116カ所もあり、そのネットワークに注目したいところだ。

 

○女性のアイデアあふれる「みしマルシェ」

女性の動きが活発なのも三島地域の特徴だ。30代・40代女性が中心になって、ものづくり体験や自慢の手芸品、お菓子・惣菜を持ち寄り販売する「みしマルシェ」が平成27年3月からずっと続いている。先月6月17日(土)の第19回開催では、初の野外イベント「発酵まち歩き・おさんぽマルシェ」──出店者と来場者の交流で地域を元気づける手づくりイベント──が催された。「対面販売だとやりがい張り合いがある」とモチベーションの高め方も熟知する皆さんだ。出店者同士の横の連携を深めることで、起業などに向けチャレンジしようという場にもなっているのがすばらしい。

 

初の野外開催「発酵まち歩き・おさんぽマルシェ」〜 飲食や雑貨、野菜、花苗販売のお店が旧道沿いにオープンし、多くの人が足を運んで楽しんでいた(令和5年6月17日 )

 

 

○デジタル化で三島の「宮大工文化」を次世代へ

地域団体「みしまふるさと塾」の皆さんが取り組んでいるのは、三島の宮大工文化などの次世代への伝承だ。
三島郷土資料館に保存展示している図面などの資料をデジタル化し、タブレットで閲覧できるようにした。さらにAR画像ゲームで宮大工の文化を学ぶこともできる。また、三島中学校の生徒が声で出演するアニメ「みしま里山ものがたり」を制作し、地域の歴史を楽しく、分かりやすく発信している。


市としても、デジタル化やアニメ制作など、新しい試みで若い世代に地域に対する関心が醸成されることを期待し、支援しているところだ。

三島郷土資料館〜デジタル化により展示していない資料もタブレットで見ることができる

 

三島の地域活動は、どれも地域への思いと工夫にあふれ、子どもたちから、学生、若い女性、地域を深く知るベテランまで、実に幅広く多様な方々が参加されている。地域を元気にしよう、文化や歴史を伝えようという郷土愛が感じられるのだ。

“伝統(今まで行われてきたこと)”の継続・・が、時代の変化に合わなくなっていないか、あるいは思考停止に陥っていないか点検し、ときにダイナミックに変える決断をしてゆく──地域に愛着と誇りと自信を持ち、コミュニティ活動をアップデートする──そんな自律的な活動をしっかり支えていきたい。


   関  連  記  事 :
 共生社会の拠点 みんな食堂 交流人口を増やそう 良寛を巡る 温もりを広げよう〜移住のキーワード 4年ぶり! 大凧合戦 情報技術は集落を支援する りの炎、永遠に──

                
 タイトル画像:
 
防火水そうからはじまるワークショップ第1回(R5.1.19)〜北澤さんといっしょにアイデア出し