日本はこの30年間、国内総生産(GDP)の伸びと、賃金の伸びが、先進諸国で最低である。
原因は?もちろん沢山あるのかもしれないが、既得権益重視で古い仕組みが変革されないことと、デジタル化の遅れが、大きな要因ではないかと思われる。
こうした中で最近、DX(デジタルトランスフォーメーション)という用語をよく目にする。このDXは、「デジタル情報通信技術(ICT)の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という提唱が発端であり、産業分野では「ICTの導入で経営や生産を効率化したり、新しい商品やサービスを生み出したりすること」とされている(参考:総務省情報通信白書 H30年版)。
まさにイノベーションとDXこそが、日本の「失われた30年」を取り戻すための必須課題だと思う。人口減少と高齢化で加速する産業・福祉・介護・教育・保育など各分野における人出不足も、DXによる効率化、労働生産性の向上なくして解決は困難だろう。
長岡市では新年度を「DX元年」と位置づけている。ご紹介しよう。
■ ペーパーレス化 ⇒ (コスト削減 + 業務の効率化)
DX推進の第一歩はペーパーレス化と云われる。
長岡市役所でもペーパーレス化を進めている。例えば報道リリースや記者会見の案内──これまで印刷して棚入れしたり、FAXしていた──を今年度からメール送信に変更した。これだけで年間15,000枚の紙の削減となって、事務効率も上がっている。
こうしたボトムアップのデジタル化は、現場の課題に即した業務改善や職員の意識改革につながる。会議・打ち合わせ資料のデジタル化をはじめ、庁内業務のペーパーレス化で、さらなるコスト削減と業務の効率化を促進していく。
■ 受付業務のDX
受付でのバーコード活用は便利で快適だ。
一例を挙げると──
500人以上が参加する民生委員の式典では、受付を10ブース設け、紙ベースによる照合で出席確認をしていたため、大勢の人員と時間を費やしていた。そこで、案内文に印刷したバーコードを読み取る方式で受付事務を一元化。その結果、受付ブースは1カ所、職員1~3人で対応可能となり、大幅な業務の効率化となった。来場者からも「驚くほどスムーズな受付だった」と、大好評だった。まさに受付業務DXのお手本と言えよう。
■ オンライン育児相談スタート
今月20日(月)から、子育ての駅 ちびっこ広場・てくてく・ぐんぐんの3カ所でオンライン子育て相談が始まる。対応するのは経験豊かな子育てコンシェルジュだ。
これは、昨年秋に実施した「女性のアイデアコンテスト」で最優秀賞を受賞したアイデアで、さっそく長岡市の施策に反映させたもの
子育ての駅の育児相談を利用する際、子どもを連れていくのに一苦労したり、ぐずって相談できなかったりした経験を持つ方も多かったと思う。オンラインなら気軽に相談できるので、ぜひ多くの方からご利用いただきたい(詳しくはHP参照)。
■成長するDXプロジェクト
以前のブログでも紹介したデジタル地域通貨「ながおかペイ」や「Edu-Diver構想」の双方向型教育情報プラットフォームは、デジタル田園都市国家構想交付金を活用した長岡ならではのDXの取り組みであり、今後の成果に大きな期待が寄せられている。
また、先月11日(水)、長岡ワークモデル「NAGAOKA WORKER」が「2022年度地方創生テレワークアワード」地方創生担当大臣賞を受賞した。長岡で暮らしながら首都圏企業にリモートワークで勤める新しい働き方の広がりは、各方面から注目されており、サステナブル時代の地方の潮流をつくるDXの取り組みと言えよう。
こうした成果は、米百俵の精神による「長岡版イノベーション」として、みんなで土を耕し、撒いてきたタネが芽を出したものだ。イノベーションを一時の流行で終わらせず、サステナブルな未来につなぐことは、雪国に暮らし、戦禍や災害から幾度も立ち上がってきた長岡人の真骨頂ではないか。力を合わせ自信をもって前に進んでいきたいと思う。
今年を、市役所業務をはじめ、あらゆる分野のDXに本腰を入れて取り組む「DX元年」に位置づけ、直面する大きな変化に対応し、長岡の明るい未来を創っていきたい。
関 連 記 事 : 教育構想“エデュ-ダイバー” イノベーションエコシステム 情報技術は集落を支援する 世界を牽引するイノベーション人材 人づくりはまちづくり(米百俵プレイス) 発酵/バイオ/循環型社会
タイトル画像: 国内総生産(GDP)の伸び