新型コロナウイルスの影響で、「都会より地方」「密より疎」のほうが安全で健康的、という価値観の転換が起こっている。 「命を守る」経済社会 こそ、いま最も求められている。自然に囲まれた生活環境や、アウトドアライフへの関心の高まりも、命を大切にしようという意識変化の表れだ。

日本社会のこれからのテーマは「健康な生活」。私たちはおのずと、自然風土と伝統に根差した「命と生活を守る暮らし」への回帰を志向する。同時にそれは、進化する最新のテクノロジーによって支えられた暮らし(その土台は命と健康)になるのだろうと思う。

こうした変化の中で、長岡市は、米などの農業生産や、受け継がれてきた発酵技術、最新のバイオ研究など、地域資源を最大限に活かして、持続可能な循環型社会を目指すバイオエコノミーを推進している。

 

 

■「地域バイオコミュニティ」に認定

今年6月、長岡市は国のバイオ戦略  「地域バイオコミュニティ」の認定(国内4地域)を受けた。
7月には、推進母体となる「長岡バイオエコノミーコンソーシアム」を設立。JAや米菓製造会社、酒造会社などに加え、長岡技術科学大学長岡工業高等専門学校、金融機関、県の研究機関など産学官金の29機関が参画し、バイオと地場のものづくり産業を結び付け、新しい産業の芽を育てる取り組みが始動した。

 

■ 世界の循環をつなぐ私たちのバイオ

 

①  越後ど発酵共同プロジェクト

 

商品第1号 レタスの漬物左と漬物の素

 

12月6日(月)、「越後ど発酵共同プロジェクト」のメンバーがアオーレを訪れ、開発した商品を紹介してくれた。このプロジェクトの目的は、柏露酒造たちばな本舗プラントフォーム新潟県醤油協業組合の皆さんが、各社が持つ発酵技術を用いて「食品ロス」の削減に貢献することだ。

 

レタスの漬物を試食

今年創設した「バイオエコノミー推進事業補助金」を活用して開発した商品第1号は、「漬物」と「漬物の素」。柏露酒造で廃棄される酒かすとプラントフォームの規格外のレタスを使っっている。

実際にレタスの漬物を試食させもらったところ、深い味わいでお酒にも白いご飯にもピッタリ! 「漬物の素」で他の野菜も試してみたくなった。

試食用「レタスの漬物」「漬物の素」

 


来年1月中旬に販売予定している。お楽しみに。

 

 

 

 
 
②  未利用魚活用プロジェクト

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長岡市と寺泊漁業協同組合は、寺泊で水揚げされる「未利用魚」の活用を模索している。

これは、温暖化のおかげ・・・で近年獲れるようになったエソや、型の小さなメギスなど、市場価値が低く、船上で廃棄されてしまう魚 (漁獲量は増加している)を有効利用し、「限りある海の資源」を活かし切ろうというものだ。

寺泊みんな食堂(お弁当)

今月(12月)は、寺泊みんな食堂・まちなかコミュニティ食堂(表町)・みずほ保育園・北部保育園の4か所で啓発キャンペーン中。メギスを使ったおかずが入ったお弁当の配布やハンバーグの試食で理解を広げてもらおうと奮闘している。

続いて来年1月には、市内の協力店舗で「未利用魚」を使ったメニューが食べられるキャンペーンを予定している。いわゆる雑魚ざこは、実は、健康のためには安全な魚資源だ。食物連鎖の頂点にいる大型魚は有害物質を蓄積してしまうため食べ過ぎはよくないと聞いたことあるのでは?

ぜひ多くの方から味わっていただき、海の恵みの豊かさと、限りある資源の活用について考えるきっかけにしていただけたらと思う。

 

 

③   エ ヌ (長岡)サイクルプロジェクト

JA越後ながおかホーネンアグリ岩塚製菓では、米菓製造の副産物(未利用資源)を、バイオ技術で水田の土づくりの資材に転用し、近年の温暖化に負けない豊かな土壌づくりに取り組んでいる。そして、このコンセプトを冠したブランド米の生産に挑戦している。

名づけて「 エヌ (長岡)サイクル」。

特長は、長岡地域内で・・・・資源を循環させることができる──私たちの足元で責任を持って循環を完結させ、その成果を見届けることができる──ことだ。

化学肥料や農薬を使用しない高品質で安全な高付加価値な米作りは、今後ますます需要が高まっていくはずだ。多くの消費者から賛同を得られる長岡のブランド米に成長してほしいと期待している。

 

 

 

長岡バイオエコノミーコンソーシアムを立ち上げて約半年。参画した企業や団体の皆さんを中心に、バイオの取り組みが進んでいることを大変うれしく思う。

いずれの取り組みにも共通点がある。今、最も優先されるべきテーマ──“生態系の力”にのっとった生産活動──をベースにしている点だ。

長岡の地域バイオコニュニティは、地域循環や地産地消を基本にながら、そこに最新のバイオ技術を投入して新しい産物・商品・ビジネスを生み出していこう、というもの。それが「命と健康を守る」経済の大きなテーマの一つであり、長岡発の人類生き残りへのトライアルともいえよう。

 

長岡の強みである市内4大学1高専が持つ研究開発力と技術力、そして人材、農産漁業の生産、ものづくり企業の集積を活かし、“ながおか”ならではの資源循環の仕組みづくりや新産業の創出につなげていきたい。

みなさんも、どうぞご参加・ご協力を!


   関  連  記  事:  “責任ある未来づくり”  発酵/バイオ/循環型社会

 タイトル画像: 
長岡バイオコンソーシアムのロゴマーク
小さな丸はさまざまな生活の中にあるバイオエコノミーの活動を表す。それが1つの輪になって回り、循環しながら未来へ進んでいく姿を表現している。