日本における男女格差の状況は、主要先進国中、なんと最下位である… 。格差がもたらす問題を認識し、女性をとりまく環境を改革することは、長岡にとっても最優先の課題だ。
まずは、内閣府のサイトから引用する。
「世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)が2022年7月、「The Global Gender Gap Report 2022」を公表し、その中で、各国における男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)を発表しました。この指数は、「経済」「教育」「健康」「政治」の4つの分野のデータから作成され、0が完全不平等、1が完全平等を示しています。2022年の日本の総合スコアは0.650、順位は146か国中116位(前回は156か国中120位)でした。前回と比べて、スコア、順位ともに、ほぼ横ばいとなっており、先進国の中で最低レベル、アジア諸国の中で韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果となりました。」(内閣府男女共同参画局のHPから)
ギャップ指数で目立つのは「政治」分野で、「経済」でも世界最低の水準(大きい格差)となっている。長岡でも同様だといわなければならないだろう。
今回は、長岡における「女性活躍」「男女格差の解消」をトピックしたい。
■今年度の“数字に見る変化”
長岡市は、「女性活躍の推進」を重要施策の一つに位置付け、あらゆる分野で、女性の意見や価値観が反映され、意思決定に参画できる環境の実現に取り組んでいる。
昨年4月には担当部長を任命し、市の女性職員がもっと活躍できる環境づくりに努めてきた。徐々にではあるが、変化が出てきたように感じている。今年度の男性市職員の育休(育児休業)の取得率(下表)をご覧になれば、「おっ」と思われるに違いない。昨年度の2.8倍となる68.1%に急増した。
令和1年度 | 令和2年度 | 令和3年度 | 令和4年度 | |
男性職員の育休取得率 | 5.6% | 24.4% | 24.1% | 68.1% |
昨年8月10日(水)に開催した女性活躍推進を考えるシンポジウムで、市のアドバイザーである古澤ゆりさんは「女性活躍のためには、男性の家事・育児参加は不可欠。育児は母親の役割という固定観念のもと、育児は女性が一人で担うワンオペ育児を解消していこう」と訴えた。
長岡にも、サカタ製作所のように男性の育休取得率が100%の企業がある。育休中でも育児を分担しなければ女性の負担が増えるだけという声や、休業時の職場に負担が出ないよう業務の効率化が必須、といった意見もあるだろう。しかし、男性が育休を取る(取れる)ことは、ワンオペ育児解消のファーストステップだ。市内企業にも広げていきたいと思う。
■女性の起業支援
先日発表された東京商工リサーチの調査によれば、企業数に対する女性社長の割合を示す「女性社長率」において、新潟県は47都道府県で最下位だった(新潟県9.32%)。全国ワーストは5回連続だそうだ。
打開策として「女性の出産や家事、育児の負担軽減に加え、女性の起業を促すセミナーの積極的な開催や、自治体の支援も必要」と指摘されていた。
ちなみに日本における起業家は男性が8割、女性は2割にとどまっている。起業への関心は4割と男性に迫っているので、女性にとって起業に至るまでのハードルが、男性に比べて高い(起業を妨げる条件がある)ことが推察される。
「長岡版イノベーション」は、若者の起業家育成を目標の一つとしているが、女性起業家も多数輩出したいと考えている。これまでNaDeC BASEを拠点に、4大学1高専と産業界と連携し、起業の機運醸成から創業、創業後の事業継続、成長までを段階的に支援する「ファーストペンギンプログラム」を進めており、今年度までに15人の学生や教員が起業している。そのうちの6人が女性だ。
また、今年度起業した2人の女性は長岡造形大学出身で (同大学で学ぶ約1,000人のうち、およそ800人は女性)、デザイン分野の勉強をしてきた人材だった。
これからの起業創業には、新しい発想で商品やサービスを生み出す「デザイン思考」ができるデザイナーが必要不可欠だといわれている。造形大出身者の活躍が期待されるところだ。
もちろんテクノロジーがイノベーションを生む不可欠な要素であることに変わりない。造形大もこの4月から、「テクノロジー&デザイン」の新しい教育課程をスタートさせる。世の中が何を求めているかを探るデザインの力と、特にデジタルテクノロジーの融合は、あらゆる分野で大きな戦力となるはずだ。
今年度は「スマートキャリアプログラム」(全6回)や、起業に関心のある女性や学生向けの「女性起業家講演会」などを実施してきた。女性人材に恵まれている長岡の強みを活かし、女性起業家の活躍環境づくりを進めよう。
「女性活躍」という言葉に違和感を感ずる場合もあるが、ともあれ、男女格差の是正は必要だ。
あらゆる分野、あらゆる場面で、男女格差を是正し、その先に、だれもが対等な関係で協働して創り出す世界──かってない飛躍の実現──につながることを願ってやまない。
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