長岡版イノベーションの目標~歴史的な変化をチャンスにする~の1つに、起業創業が活発に起きる環境( スタートアップのエコシステム )の構築がある。
IT技術やデジタル技術の急速な発展によって、社会や経済のあらゆる分野で急速な変化が起きていることは、既存の産業にとっては生き残りをかけて成長するチャンスであり、新規には起業創業の大きなチャンスである。
しかし、起業創業のハードルはけっこう高い。なんといっても、起業には勇気がいる。資金も必要。経営のノウハウも。マーケットで価値ある事業なのか?といった、価値判断も必要だ。もろもろ条件をクリアして起業に結びつけるには、多くのサポートが不可欠だ。
こういった一連の支援を総合的に行なうのが「ファーストペンギンプログラム」だ。長岡市では4大学1高専・長岡商工会議所・金融機関・関係団体が連携協力して、起業イベント開催や補助金交付など、起業・創業から成長までの各段階に応じた支援を行っている。
平成30年度から現在までの4年間で、市の学生起業家育成補助金やスタートアップ創出補助金を受けて、すでに学生や教員など14者が起業している。業種は多岐──製造業、飲食業、高齢者IT支援、ソフトウェア開発、映像関係など──にわたっており、若い世代が意欲的に起業にチャレンジしている。
今回は、長岡におけるスタートアップ支援についての報告である。
■ 起業の手法を学ぶ
5月21日(土)、ファーストペンギンプログラムの一環で行っているリーンローンチパッドプログラムがスタートした。
※ リーン=Lean (スリムな、効率の良い)
※ ローンチパッド= launch pad (発射台)
今年で4回目を迎えるこのプログラムは、仮説を立てて検証するプロセスを繰り返しながら、効率的に新規事業の立ち上げ手法を学ぶ「シリコンバレー流の事業化プログラム」である。長岡で、これまで60人を超える学生、社会人が参加してきた。
デザイン思考をはじめ、事業をゼロからスタートするための手法を学ぶ。そして、ビジネスプランからアイデアの事業化プランまでを実際に作成して、ビジネスプランをブラッシュアップしていく。全6回の講座の最終回の「DEMO DAY」では、プランの発表会を実施する。
こうした実践的な土台を培い、参加者の中から2社の起業が実現した。令和元年度はAIがおすすめの日本酒を教えるアプリを開発した「(株)サケアイ」、令和2年度は高齢者のITサポート事業を行う「(株)雷神」が誕生している。「(株)雷神」については、先回のブログで紹介したばかりだ。
今後も、参加者(今年は22人)からは、このプログラムを存分に活用して、起業に結び付けてくれることを期待している。関係者のみなさん、市民のみなさんからも、せひ、長岡が支援するこのプログラムの存在を広めていただきたい。
■ 長岡版「起業エコシステム」の実現へ
この他にも、学生起業家交流会や起業講演会などを実施し、起業マインドを醸成するとともに、起業しやすい環境づくりにも力を入れている。今年新たに、女性起業家支援プログラムやビジネスアイデアコンテストを開催する予定だ。
来年の夏、いよいよ「米百俵プレイス ミライエ長岡」が先行オープンする。
その5階エリアは、4大学1高専の学生・教員や産業界の関係者などが集い、交流するオープンイノベーションの拠点となる。起業支援の機能を充実させるとともに、コワーキングスペースを整備する。また、銀行や長岡商工会議所も入居し、ここで起業支援のサービスがすべて提供することによって、長岡の「起業のエコシステム」を形成していきたい。
関 連 記 事: 情報技術は集落を支援する まちづくりとイノベーション都市 レッツ!デザイン思考 長岡発 アフターコロナ新ビジネス
タイトル画像: リーンローンチパッドプログラム最終回。「DEMO DAY」と題し、ビジネスプランの発表会が行われた。