人や企業の拠点を、過密な大都市圏から自然豊かな地方都市にシフトさせる「地方分散」の動きが話題になっている。
この動きを予測し、 早々に「 長岡市サテライトオフィス等開設促進事業補助金」を設け、首都圏企業のサテライト(拠点)誘致を進めてきた長岡市では、新しい可能性が実感できるさまざまな具体的な動きが出てきた。その一端をご紹介しよう。

 

 

ジョイゾー訪問

過去ブログで紹介したシステム開発を手掛ける株式会社ジョイゾー(東京都江東区)はその第1号。今月9日(火) に開設されたサテライトオフィスを内覧させてもらった。
ジョイゾーのサテライトオフィスは、JR宮内駅からほど近い元々は居住用だった3LDKだ。壁や床は木目調に統一され、オシャレなカフェ風の空間にリノベーションされている。

 

 

日々のリモートワークは、自宅で、あるいはこのオフィスにある大型スクリーンにバーチャルオフィスを投影して行う。全国各地に点在する遠方の同僚たちと、まるで同じオフィス空間にいるような感覚で快適に仕事ができる。
長岡の拠点で働くのは、星野智久さんと、小林智さん。星野さんは出身地である川口地域に、小林さんは小千谷市に住んでいる。ときどき他地域で在宅勤務する仲間が、「醸造のまち摂田屋」に近いこの拠点に集まって、ワーケーションをする。ただ、コロナ禍の今は控えているとか。

ワーケーションは、福利厚生の新しい形として、人材の消耗が早いと言われてきたITアイティー業界で、いち早く採用されている。また、個々人の心身の健康管理の第一はセルフケア(自己管理)であり、組織による健康指導・・のような依存的な形態から自律的セルフケアに意識転換するきっかけとなる。
一人ひとりが自律的な存在であることが、オープンマインドの醸成につながり、仕事効率をあげ、自信を育てて幸福感につながる。今こそ、人の力を信ずる長岡米百俵スピリッツを活かす時だと思う。


この日は、北海道・東京・千葉・岡山で働くジョイゾー社員とリモートで繋ぎ、私も会話に参加させてもらった。

 

 

すでに長岡に来たことがある数名のメンバーが「お米や日本酒、へぎそば、生姜醤油ラーメンなどを満喫した」と語る。首都圏から新幹線で90分のアクセスに加え、海あり山あり、お酒あり、おいしい食べ物に溢れる長岡は大変魅力的だと教えてくれた。

自然風土や観光・食を楽しめる環境で、常にリフレッシュ&エネルギーチャージしながら仕事をする=ワーケーションの拠点としてはもちろん、地元の学生たちやエンジニアが集まるコミュニティスペースとしても活用したいとのこと。これからの展開に注目しよう。

 

 

 

3社共同オフィス訪問

続いてこの日は、株式会社Verveヴァーヴ(本社:東京都港区)株式会社KUNOくの本社:東京都港区)、株式会社Nizaニザ(本社:長岡市)の3社共同サテライトオフィス(長岡市の補助金第2号)を見学した。


このオフィスは長岡駅東口徒歩0分の好立地にあり、居住用のスペースをリノベーションした室内には、遊び心いっぱいの自由な雰囲気がうかがえる(ギターやスノーボードを発見!)。

 

 

 

erve代表取締役の新林徹さんは、長岡の魅力を「東京からのアクセスが良く、自然豊かで食べ物がおいしいこと」に加え、「長岡花火」もあげていた。
KUNO代表取締役の佐藤傑さん(長岡市出身・東京からUターン)は、4大学1高専15専門学校からの雇用についても意欲的で、当面は即戦力となる中途採用にも力を入れたいと話し、5年後にはVerveとKUNO合わせて長岡から30人の雇用を見込んでいる。


また、佐藤さんには「長岡市サテライトオフィス誘致サポーター」の第1号に就任してもらった。サテライトオフィス開設意向のある首都圏企業と長岡市の懸け橋となっていただく。長岡への分散の動きが広がることを期待したい。



ウイルス禍が、雇用・就業に大きな影響を及ぼしている今、長岡全体で新しい動きを的確に捉えて対応しなければならない。働き方の選択肢を増やし、地元企業での就職に加え、学生をはじめとする若者の企業創業を促し、そして分散の受け皿となって新たな雇用をつくっていこう。


東京でなければとか、地方はビジネスに向かない、と長らく言われてきた。
しかし、インターネットとデジタル環境の発達で、どこにいても仕事ができる時代になった。さまざまな工夫をし、条件を整え、それでもなお、長岡ではダメだという人・企業があるなら、謙虚にその声に耳を傾け、改善していきたいと思う。あらゆるものにオープンマインドで接し、民主的で気持ちよく協働できる「開かれたNAGAOKAながおか」に進化していきたいと思う。

新年度のサテライトオフィス誘致のための支援政策は、さらに拡充し、補助対象を広げることにしている。ウイルス禍で地方分散が加速するトレンドを引き寄せ、若者の地元定着、UIJターンの促進、魅力ある企業の誘致につなげていきたい。

 

長岡市サテライトオフィス等開設促進事業補助金令和2年度補正予算)
長岡市内に本社・支社等を有しない企業がBCP事業継続計画に基づいて長岡市内にサテライトオフィス等を開設する際に、オフィス改修費、通信環境整備費やオフィス賃借料、サテライトオフィス等での雇用に要する経費など最大で1社あたり500万円を補助。今年度の募集期間は3月15日(月)で終了。

 



<参考データ>

■(株)ジョイゾー概要
○本社所在地:東京都江東区木場6-6-2
○代表者:代表取締役 四宮靖隆
○資本金:200万円
○従業員数:18人
○主な事業等:サイボウズ(株)の kintoneキントーンをベースとしたシステム開発と連携サービスを提供。サイボウズ公認SI(システムインテグレーション)パートナー。
■(株)ジョイゾー長岡サテライトオフィス
○場所:長岡市宮内1丁目(JR宮内駅近く)
○間取り等:約80平方メートル ワンフロア3LDKを賃借
・長岡近辺に居住している社員2人が開発拠点として勤務
・長岡を訪れた社員が長岡の観光を楽しみながら仕事もできるワーケーションスポットとして活用同社のワーケーションスポット開設は全国で2例目
・地元の学生やエンジニアが集まるコミュニティスペースとしての活用も

■(株)Verve
○本社所在地:東京都港区芝大門2-1-13
○代表者:代表取締役 新林 徹
○資本金:110万円
○従業員数:2人
○主な事業等:コンサルティング、システム開発

■(株)KUNO
○本社所在地:東京都港区芝大門2-1-13
○代表者:代表取締役 佐藤 傑
○資本金:900万円
○従業員数:20人
○主な事業等:コンサルティング、システム開発

■(株)Niza
○本社所在地:長岡市大手通2-2-6
○代表者:代表取締役 新林 徹
○資本金:990万円
○従業員数:2人
○主な事業等:コンサルティング、スタートアップ企業支援

■(株)Verve(株)KUNO(株)Niza共同サテライトオフィス
○場 所:長岡市台町1丁目川上ビル6階
○間取り等:約105平方メートル ワンフロア1LDKを賃借
・(株)Verveのパートナー企業2社も入居し、3企業の長岡市での開発拠点となる
・冬季ウインタースポーツを楽しむワーケーション拠点として(株)Verveだけでなくパートナー企業も利用可能


   関  連  記  事: 分散の受け皿(ピンチはチャンス) 長岡ワークモデル
 タイトル画像:
ヴァーヴのオフィスで。右から私、Verve代表取締役の新林徹さん、
KUN代表取締役の佐藤傑さん、Verve 井本久美子さん