今わが国で、IT人材の不足が大きな問題となっていることはご存じかと思う。
「IT人材需給に関する調査」(経済産業省 2018)によると、日本のIT人材は、2030年に最大で約79万人も不足する. . . . 。現在でもすでに、「IMD世界デジタル競争力 ランキング2022」の日本のランキングは63カ国中29位、人材に関する順位は50位、中でもデジタル・技術スキルは62位と低迷しているのだ。※ IMD:国際経営開発研究所
(経済産業省HP掲載資料から抜粋)
日本の産業も社会も、厳しい状況といわざるをえない。
当然、国はデジタル人材の育成に本腰を入れて取り組み始めている。教育現場ではすでに2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化、今年度からは高等学校で「情報Ⅰ」が必修化され、この4月(2023年度)からは、より発展的な選択科目「情報Ⅱ」もスタートする。デジタル人材の育成こそ、日本の重要課題なのである。
技術のまちNAGAOKA としても、市独自のデジタル人材育成を進めている。ご紹介しよう。
■デジタルは 人 (ユーザー) 中心で
今月2日(木)、「米百俵デジタルコンテスト2022(米100DC)」のグランプリ・特別賞発表会を開催した。これで3年目となる米100DCが目指すのは、有為なデジタル人材の発掘・育成で、募集するのはデジタルプロダクト(アプリ、またはIoTデバイス)のアイデアだ。ここ3年は コロナ禍で成果発表の場がなくなった若者の支援にもなっていたと思う。
今年の募集テーマは「子どもの遊び、学び、暮らしを豊かにする」。
このテーマを実現するため、全国から過去最多となる131の個人・グループが、デジタルプロダクト(アプリ、またはIoTデバイス)のアイデアを寄せてくれた。着想のヒントとなるよう、市内の小学生に公募した「ひみつの道具のアイデア」(263件)と今年度「デザイン思考」の特別授業に参加した川崎小学校5・6年生、中之島中央小学校と脇野町小学校の5年生、計223人のアイデアをWEBサイトに公開した。
注目してほしいのは、長岡の子どもたちがユーザ目線で投票し、グランプリを選んだことだ。しかも、彼らは「あったらいいな」と思うものの探求=「デザイン思考」を体験的に学び、その声をまとめてくれた子どもたちなのだ。
応募131作品(応募者は12~24歳の若者)のうち、一次審査を通過した14作品の中から特別賞を5作品選び、前述した3校の児童による投票でグランプリを決定した。全国から多くの作品が寄せられたことをうれしく思う。また、子どもたちも若い人も、純粋に人間中心的に考えてくれるのが米百俵と冠したコンテストにふさわしく、ここから大きく広がるといいなと心から願っているところだ。
グランプリは、その日頑張ったことに「はなまる」付きのレシートが出てくるかわいいミニプリンター「はなまる屋」を提案した阿部桃香さん(長岡造形大学)が受賞した。投票した小学生からは、
・ちゃんとできたらご褒美があり、できなかったとしても残念賞的なものがあっていいと思う(6年生)
・宿題をしても褒められないけど、これは褒めてくれるところがいいです。(5年生)
・明日もがんばろうというモチベーションになる。(6年生)
など、幅広い支持を集めた。ミニプリンターの実物模型もクオリティーが高く、すぐにでも製品化できるのではないかと期待される作品だ。
私も特別審査員として、市長賞を選定させてもらった。選んだのは、IoTと3Dの技術を使い世界各地の気象情報を可視化する「そらミル」(作者:新潟明訓高等学校・古野間久知さん)という作品。この作品は、3D表現により地理学習の手助け、災害時のシミュレーションなど活用の幅も広く、Google Earthの3D地理情報に気象情報を載せれば技術的にも実現できそうだ。
他の受賞作品を見ても、最先端のデジタル技術を使いながら、具体的な形に作り上げており、皆さんの力に大きな感銘を受けた。このコンテストに関わった長岡の小学生たちも、「あったらいいな」と思うものがデジタル技術で形になった作品を目の当たりにして、大きな刺激を受けたと思う。
■次世代デジタル人材を育成
先月2月4日(土)には「長岡プログラミングコンテスト2022」の発表会・表彰式もあった。
当コンテストは、プログラミングを学んできた子どもたちの発表の場であり、彼らや友人がプログラムに触れて刺激を受け、より技術を研鑽する機会となるよう設けたもので、今年で2年目を迎える。対象は県内の小中学生たちだ。
このたびのテーマは
①身の回りの困りごとを解決するプログラム
②その他
長岡市外からも含め、25作品(小学生18、中学生7)が集まった。
発表会・表彰式では入賞した8人が登壇し、それぞれの作品の特徴や苦労した点などを紹介してくれた。※詳細はこちら
①身の周りの困りごとを解決するプログラム部門のグランプリは、プログラミング言語「Python」を使用したデータ処理プログラム「偏差値表を作ろう」を制作した渋谷士門さん(新潟大学附属長岡小学校6年)が受賞。
②その他のプログラム部門のグランプリは、プログラミング言語「Scratch」を使用したゲームプログラム「枝豆シューティング」を制作した石山虎太朗さん(南中学校1年)が受賞した。
この他の入賞作品も実に完成度が高く、小中学生プログラマーの能力の高さを感じた。
長岡市は、これまで子ども向けのプログラミング体験会などのイベントを開催し、子どもたちが気軽にプログラミングに触れ楽しむ機会を提供してきた。昨年12月の小学生対象の体験会には、30人の定員に対して6倍の185人から申し込みがあるなど、プログラミング人気の高まりを感じている。
現在、さまざまな業種でデジタル化やDXの推進が叫ばれ、企業がデジタル人材を求めていることも背景にあるだろう。
7月22日(土)に「米百俵プレイス ミライエ長岡」が先行オープンを迎える。子どもたちの興味や好奇心に応じて、プログラミングやデジタル技術などさまざまなプログラムを用意し、脳が動く喜びを感ずることができるような魅力的な学びの場・交流の場にしたいと考えている。
ミライエを舞台に、子どもたちが楽しく学び、大人も含め多くの人との交流を通して、米百俵のまち長岡で次世代を担うデジタル人材を育てていきたい。
関 連 記 事 : レッツ!デザイン思考 長岡発 学生ベンチャー
タイトル画像: 「米百俵デジタルコンテスト2022」グランプリ・技術賞
作品名 はなまる屋 / 作者 阿部 桃香さん(長岡造形大学)