長岡市生ごみバイオガス発電センターは、国内最大規模の生ごみバイオガス発電施設だ。
市民の皆さんの徹底した分別によって 収集した生ごみをメ タン発酵、発生したガスを燃焼させて発電。年間240万キロワット、一般家庭の約560世帯分の電気を生み出している。
センター稼働前の平成24年と比べ、燃やすごみの量を約3割削減。CO2(二酸化炭素)排出量は年間558トン(一般家庭の約140世帯分)減少させていることになる。
発電に利用した発酵残渣(発酵後のカス)は、これまで輸送費をかけて県外に搬出され、主に燃料として使われてきた。これを長岡の外に持ち出すことなく、農業等に利用できれば、市内で生ごみという資源を循環させるシステムが完成する。
そうした考えのもと、資源循環型のバイオコミュニティの形成をめざす長岡バイオエコノミーコンソーシアムでは、この発酵残渣を寿メタンバイオ肥料として活用する実証実験を行ってきた(過去のブログ参照)。
そして、このたび、肥料としての効能が十分あること、安全性に問題がないことが確認できたことから、市民向けに無料配布することとした。
そこで今回は、生ごみの資源循環の一環である、発酵残渣を肥料として活用する取り組みを紹介したい。
■肥料の成分と安全性
無料配布する寿メタンバイオ肥料は、肥料の3大要素のうち、チッソとリン酸がしっかりと入っている(カリウムは少な目)。成分的には鶏糞に近い。葉物や実のなる植物には使いやすいのではないかと考えられる。野菜専用の市販肥料と比べると、肥料分は弱めだが施肥量を調整することでうまく使えると思う。
どのような使い方ができるか、利用していただいた方のフィードバックを期待しているところだ。
もちろん、安全性はお墨付きだ。重金属含有量肥料基準値を大きく下回っており、使用後土壌中での重金属類の数値の増加などは見られず、安全性を確認済みだ。
■化成肥料と同等の生育
令和4、5年度に、寿メタンバイオ肥料の有用性を確認するため、長岡バイオキューブ、長岡緑地環境協同組合、あぐらって長岡、長岡農業高校と連携して実証実験を行った。
作物の生育確認や土壌分析を経て、適正量を散布することで化成肥料と同等の生育状況となることが確認された。
市民農園を営む方の中から、希望者9名に使用してもらった結果も同様で、「市販の肥料とそん色なく栽培できた」との評価だった。また、千秋が原の公園花壇で使用したところ、化成肥料を使用した場合と同じく、美しい花を咲かせることができ、花づくりにおいても肥料の有効性を確認することができた。
■寿メタンバイオ肥料を市民の皆さんへ
4月21日(日)、次世代農業推進拠点施設としてリニューアルした「あぐらって長岡」で、ドローンをはじめとするスマート農業機器などが体験できる「あぐりフェス」を開催。併せて、寿メタンバイオ肥料を市民の皆さんに無料配布した。
用意した肥料は10kgを400袋で計4トン。十二分に準備したのだが、想定を大きく上回る160人を超える方が来られ、午前中で2トン、午後3時までに残りの2トンも完配した。
肥料を受け取った方からは、「肥料の地産地消、循環型はすばらしい」「環境にやさしい肥料を使用したい」などの声が聞かれ、SDGsや循環型社会に対する市民の皆さんの高い関心がうかがえた。
次回の配布は、5月1日(水)と4日(土・祝)に「長岡市営スキー場 B駐車場」で行い、2日間で4トンを準備する。
事前に電話予約が必要(長岡市産業イノベーション課 0258-39-2402)となる(詳細は市HP参照)。ぜひ多くの方からお越しいただき、家庭菜園などにご使用いただければと思う。
その後の配布については、予定が定まり次第、市のホームページで順次お知らせする。
■市内での資源完全循環の第一歩
寿メタンバイオ肥料は、年間400トン発生する。今後は、市民への無料配布に加え、市内の公園花壇での使用など、幅広い活用方法を検討していきたい。
こうして、県外に搬出していた発酵残渣を肥料として市内利用に切り替えることで、輸送距離の減少により年間約5トンのCO2排出量を削減できる(約93%削減)。
今後も、寿メタンバイオ肥料を大きく発信していきながら、市民の皆さんのバイオエコノミーや資源循環に関する更なる理解促進を図り、生ごみというバイオマス資源の完全循環の実現に向けて取り組んでいく。
市民協働で共生循環社会を共創していきましょう!
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タイトル画像 : 長岡農業高校による試験栽培(大根)
左から、下水道由来肥料(かんとりースーパー緑水)、寿メタンバイオ肥料、化成肥料(8-8-8)、下水道由来肥料(かんとりースーパー緑水)+カリ、寿メタンバイオ肥料+カリ