2015年、国連サミットでSDGsエスディ-ジ-ズ (持続可能な開発目標)が全世界の合意として示された。
経済成長への偏重がもたらした数々の問題 (異常気象/環境問題/貧困や差別/生物多様性の欠損 etc.)をみんなで協働してパートナーシップで解決し持続可能な世界をつくろう──(解決できなければ地球に未来はない)──というメッセージだった。
殊に今、脱炭素社会への移行は人類最大のテーマ。CO2 (温室効果ガスの1つ)の排出と吸収をバランスさせ、プラスマイナスゼロ=正味ゼロとするカーボンニュートラルを実現しなくてはならない。


この状況下で世界的に注目されているのが、
バイオマス(生物資源)バイオテクノロジーを活用したバイオエコノミーである。今後10年以内に世界の製造業の3分の1がバイオものづくりに置き換えられ、その市場規模は約4,000兆円に達するとの分析もある(資料)。循環型のバイオエコノミー社会は、物流コストを抑え、食料とエネルギーの自給率を高め、CO2の排出などの環境負荷を減らす。日本政府も、2030年までに世界最先端のバイオエコノミー社会を実現することをめざし、2019年にバイオ戦略を発表している。

 

長岡市は令和3(2021)年6月に、内閣府の地域バイオコミュニティに全国4地区の1つとして認定を受け、地域資源循環のバイオエコノミーを推進してきた。過去のブログ(, )でも紹介したが、今回は最新の動向を紹介したい。

 


第4回バイオサロン異なる視点で議論を深め、地域課題を解決する新プロジェクトの芽出しや育成、産産/産学間のマッチングを進めている〜今回のテーマは雪の利活用 (R5.7.23(日)ミライエ長岡5階)

 

バイオコミュニティ都市・長岡

 

豊かな自然と農業、食品産業、発酵文化など、バイオの資源循環の下地がある長岡は、まさにバイオエコノミーにふさわしいまちだ。まずは、データで見てみよう。

 1. 人口26万人、面積891万㎢ (農地率24% 林野率49%) で循環型社会の形成に適したサイズ
 2. コシヒカリ生誕の地であり、米の作付面積は全国2位
(12,300ha)
 3. 日本酒の酒蔵数16は全国2位
 4. 米菓生産量は全国2位
 5. 世界注目の錦鯉は長岡発祥で、日本の輸出額は59億円

さらに、

 1. 4大学1高専があり、NaDeCナデック構想のもと産学官連携が進んでいる
 2. 製造業と農業の両方がそろう産業構成と規模がある
 3. 高度な技術集積をもつ「ものづくりのまち」
  ※製品出荷額6,571億円(2022年)は、人口20~30万人の同規模自治体で日本海側トップ 

こうした長岡ならではの強みが活かされれば、全国にバイオエコノミーのロールモデルを示せると考えている。

 

■ 新しい芽を見つける育てる

 

現在、長岡バイオエコノミーコンソーシアム(産学官金45の企業・機関が加盟)のメンバーを中心に、バイオと「ものづくり」の融合による新産業の創出や、地域資源循環の促進など、さまざまな取り組みを進めている。

昨年から開催されている Matchingマッチング HUBハブ Nagaoka の活動にも注目だ。
下の写真は、今年の展示会でのワンシーン。産学官金の境界をまたぎ、最適な連携先、つまりパートナーを見つける場だ。ここで複数同時・・・・的なパートナリングも期待できる。新技術や新製品、新事業につなげようと情報交換や商談が活発に行われていた。

 

令和5年9月23日(祝土)Matching HUB Nagaoka 2023 :展示会には市内外の126の会社と団体 (長岡バイオエコノミーコンソーシアム会員企業8社、長岡技大、長岡高専、コンソーシアム事務局を含む) が出展した

 

新芽から成長が期待されるケースもご紹介しておこう。
いずれも市が支援するケース。それぞれ異なる分野の技術が繋がる──オープンイノベーションだ。

1.生ごみバイオガス発電センターの発酵かすを肥料として再利用する実証栽培試験。
 ※あぐらって長岡  内のスマートアグリの発信拠点でデータ化が進行中。 ゼロエミッションが実現しそうだ。
2.樹木チップによるミミズ養殖  ※令和3年度からの補助制度利用
3.下水汚泥の肥料利用
4. 水産養殖と水耕栽培の循環生産システムの開発
5. 長岡技術科学大学の地域共創プロジェクトCOIシ-オ-アイNEXTネクスト
 ※「農家のたくみの技」を「科学の力」で付加価値を高め、田んぼを次世代に継承することをめざす。米どころ長岡として、先駆的な資源循環の実装、バイオコミュニティの醸成につながると期待されている。

 

 

 

■ 強力なバイオの新拠点が誕生!

 

今月7日(火)、長岡市と国内最大級の公的研究機関「産業技術総合研究所(産総研さんそうけん」、長岡技術科学大学の3者による「長岡・産総研 生物資源循環 ブリッジ・イノベーション・ラボラトリ」がミライエ長岡5階に開設された。産総研のブリッジ・イノベーション・ラボラトリ(BIL)の開設は全国2か所目で、自治体が参画するのはこのNAGAOKA・AIST-BILが初めて。ここを拠点として「有機廃棄物を含む生物資源の資源循環」をテーマとした研究開発や、食品・バイオ関連等の企業支援を連携して行っていく。

 

※ 国立研究開発法人産業技術総合研究所(National Institute of Advanced Industrial Science and Technology、英名略称:AIST)は、独立行政法人(国立研究開発法人)として設置された経済産業省所管の公的研究機関。略称は産総研。

 

設立式で、プロジェクトマネージャーの宮房孝光さん(産総研)は、「今は廃棄されていても、それは汚物や不要物ではなく“未活用資源”。価値を高めて長岡から社会に送り出す」と意気込みを語ってくれた。

NAGAOKA・AIST-BILが手始めに挑むのは、次の3テーマ──

 ・酒粕さけかすの機能性成分の解析と発酵食品のブランド化
 ・米菓製造における残渣ざんさ(米のとぎ汁)から、高付加価値物質の生産
 ・生ごみバイオガス発電センターの残渣ざんさから、病害防除に役立つ生物製剤の開発

バイオの循環はすごい。生ごみから病害防除の生物製剤が生まれるのか… 。

 

[長岡・産総研 生物資源循環 BIL]キックオフイベント 左から私/ 技大 小笠原渉教授/ 宮房プロジェクトマネ−ジャ− /岩塚製菓 阿部雅栄常務取締役/ プラントフォーム 山本祐二代取役CEO(R5.11.7(火))

 

 

 

 

令和5年11月7日(火) 左から産総研 村山宣光副理事長(上級執行役員)/私/技大 鎌土重晴学長

長岡技科大に産総研の研究力が加わり、長岡の産業成長の力強い拠点ができたと感じている。
市内はもちろん、全国の企業から長岡を実験フィールドとして活用してもらい、そのモデルを全国に発信していく。

バイオといえば、農業や食品が思い浮かぶと思うが、そこには多くの機械や装置、ICTテクノロジーなどが必ず存在している。デジタル社会だ。
バイオを入口としながら、ものづくりをはじめとするすべての産業界が NAGAOKA・AIST-BIL を活用し、地域の課題解決や新産業の創出につなげることによって、長岡の経済を活性化していきたい。

 


   関  連  記  事 :
 未来を創るバイオコミュニティ “責任ある未来づくり”  感染症から市民を守る「長岡の下水道」 ごみ処理は温暖化対策

               
 タイトル画像 :
  

長岡のバイオの3つのシンボル
     1. コシヒカリ(長岡は生誕の地、作付面積は全国2位(12,300ha))
     2. 日本酒(酒蔵数16は全国2位)
     3. 錦鯉は長岡発祥