野本恭八郎(野本互尊)の寄付で、大正7年(1918年)に互尊文庫が開館してから100年余り。 彼が説いた互尊独尊※の精神は、民主主義の基本と一致 する。一人ひとりの知を培い、力を合わせてまちをよくしようという長岡人の志だ。開館当初の蔵書数(約3万冊)は、全国で5本の指に入る図書館だと高く評されたという。
互尊文庫を踏襲する長岡市には、現在、9つの図書館と文書資料室がある。合計の蔵書数は約90万冊に上る。いずれの図書館もそれぞれの特色をもち、市民のみなさんからほんとうに親しまれている。
※ 互尊独尊:「人はそれぞれ唯一無二の尊い存在であり(独尊)、独立したそれぞれが互いを尊重して生きること(互尊)が世界をよくする」という思想
一方で、インターネットやさまざまな情報機器が、私たちの情報収集や学びの手段として普及している。図書館も進化しなければならない。人工知能の開発で著名な長岡出身の清水 亮さんは、「図書館は多様性を育む場。多様性こそが人にも人工知能にも大切」という。
令和5年からの順次オープンする予定の「米百俵プレイス ミライエ長岡」のなかに、互尊文庫は移転し「まちなか図書館」として新しいスタイルの図書館に変身してリスタートする。
長岡の図書館は、みんなの楽しみ・学び・イノベーションの場となり、新しい市民ニーズに応えようと変化している。その一端をご紹介したい。
■図書館の新たな取り組み
○貸出カードの電子化
今年4月から貸出カードの電子化を本格開始した。
スマホ貸出カードで本が借りられるようになり(電子化は県内2番目)、スマホからMyライブラリ機能にアクセスして、貸し出し予約や延長、借りている本の確認もできるようになった。Myライブラリ機能は、パソコン・タブレットからも利用可能だ。図書館の窓口でパスワード発行の申請をすれば、すぐに利用できるので、ぜひお試しいただきたい。
○24時まで開館!夜の図書館を楽しむ会
昨年に引き続き、中央図書館では、開館時間を24時まで延長する「夜の図書館を楽しむ会~中央図書館24時~」が開催された。先月のことだ。
企画:長岡図書館友の会(なりふ)
(11月27日(土)開催済み)
普段は入れないバックヤードの見学・謎解きゲーム・チェロの演奏と絵本の朗読のコラボ・大人も楽しめる紙芝居など、時間帯にごとに多彩なイベントが催された。来訪者は約300名。昨年の2倍以上!の方が訪れ、一味違った雰囲気も相まって、幅広い世代の方々にお楽しみいただいた。(当日の様子はこちらから)
■図書館を支える友の会・ボランティア
図書館の運営や企画には、ボランティアさんの協力が欠かせない。長岡の図書館は市民協働の図書館だ。
「長岡図書館友の会」など10を超える団体が活動し、「図書館で楽しいことがしたい、もっと素敵な図書館に!」をモットーに、書架整理や行事の運営補助にとどまらず、ウイルス禍の中でも、オンラインによる講演会の配信や絵本等の読み聞かせ(おはなし会)、紙芝居などを工夫しながら行なってきた(映画会や古本市はコロナで休止中)。
ボランティアの皆さんは、こどもたちの笑顔や絵本に集中して聞き入る様子に大きな喜びを感ずるという。日ごろから練習を重ね、おはなし会に臨んでいる皆さんの生き生きとした姿に、心打たれる。感謝したい。今後も、多くの方々に参加賛同をいただき、楽しみながら図書館を支えてください!
■本に親しむ子どもたち
長岡市は、「第二次長岡市子ども読書活動推進計画」に基づき、子どもたちが本との出会いを通して豊かな感情と生きる力を育む環境づくりに取り組んでいる。
家庭でも絵本に親しんでもらえるよう、中央図書館をはじめ市内8図書館では、0歳~2歳の赤ちゃん向け絵本を3冊セットにした「ベビーパック」の貸し出しをしている(令和元年8月から)。
「どうぶつ」・「のりもの」など10種類のパックが用意されている。司書がテーマごとに選定したパックは、どのような絵本を選べばよいかわからない、絵本を選ぶ時間がない、という方々から好評で、累計貸し出し数は4,000件に上る。
さらに、昨年8月からは3歳~5歳の幼児向け「キッズパック」も用意、すでに累計貸し出し数2,000件を超え、好評である。
今後も親子で本に親しむ機会を増やし、健やかな成長に寄与すると身近な図書館をアピールしてゆきたい。
これから「米百俵プレイス ミライエ長岡」の中にまちなか図書館がオープンすることで、既存の図書館との相乗効果や連携が生まれるだろう。市民の教育・文化の発展、情報発信を担ってきた中央図書館の魅力や強みも一層引き出されるはずだ。長岡の図書館のチャレンジは続く。ぜひご期待いただいて、引き続きご愛顧願いたい。
関 連 記 事: 科学博物館70周年 人づくりはまちづくり(米百俵プレイス)
タイトル画像: 大正7年(1918年)に開館した大正記念長岡市立互尊文庫