長岡の各地域で、復興支援員や『地域おこし協力隊』が活躍している。
地域おこし協力隊は、都市部から過疎地(高齢化が進む地域)などに移住し、地域ブランドや産品の開発・販売・PR、農林水産業への従事、住民の生活支援などをしながら、その地域への定住・定着を図る取り組みだ。
市では平成28年から「長岡市地域おこし協力隊」を設置、現在10人が活躍している。
■コスプレイベントのロケ地に
川口地域に新しい風を吹き込み、新たな魅力を発信してくれた元隊員の宮 美紀さん (東京都出身・26歳) を紹介しよう。
宮さんは、大学時代にボランティアサークル活動で長岡を訪れ、豊かな自然の中で過ごす生活、家族のような人間関係に惹かれ、卒業と同時に地域おこし協力隊員となった。
受け入れ先でもあるNPO法人くらしサポート越後川口と「山にある運動施設に人を集めたい」と頭をひねった結果、「コスプレイヤーの撮影ロケ地」というアイデアを思いついたという。
豪雪地ならではの川口の雪原、緑に囲まれたテニスコート、廃校になった校舎など──、首都圏や大都市の人にとって新鮮で珍しい風景がコスプレイヤーの間で評判になり、関東や近県から集うイベントとして定着した。
コスプレイベントの参加者は、地域の飲食店や観光地を訪れ、交流人口を広げてくれる。また、SNSで発信してくれるので、地域の魅力発信に一役も二役も買っている。
昨年2月、宮さんは地域おこし協力隊の任期3年を終え、同5月「一般社団法人ながおかちゃぶだい」を設立。ウイルス禍の中でも、感染防止対策を講じながら川口運動公園で雪ロケーション・コスプレイベントを開催するなど、川口に定住して活動を継続している。
今月21日(日)にも、川口地域交流体験館杜のかたらい等でコスプレイベントが開催されることになっている。期待しよう!
■雪を利活用した生ハム
川口でもう一人、紹介したい若者は、山の暮らし再生機構(LIMO)の復興支援員・春日惇也さん(山形県出身・36歳)だ。
春日さんは、長岡造形大学卒業後、平成19年に復興支援員となり、中越地震の復興に携わった。そんな彼が『雪』を活用して生ハムづくりを始めたのは復興事業が落ち着いた平成27年。地域活性化のアイディアを具現化し、新しい川口の魅力を産み出す原動力となっている。
県内産ブランド豚をドイツ岩塩・イタリア海塩・佐渡海塩で仕込み、雪室で熟成させる。
貨物コンテナを改修した雪室に雪を詰め、5~6月頃まで冷気を熟成室に送って湿度の高い冷気で熟成させる──これが川口の生ハムの“奥義”だ。
これまで、生ハム作り体験をメインに活動し、今年度は体験会を8回開催。ウイルス禍の中でも50組100人が参加している。参加者は生ハムのオーナーとなり、最初の工程「血抜き」「塩もみ」を体験し、その後の工程は春日さんが管理する。川口に吹く風で乾燥と発酵を促し、雪室で熟成させ、約1年6カ月で完成したものを参加者に渡す仕組みだ。
先月、この生ハムを試食する機会があった。ほどよい塩味と、噛むほどに熟成した旨味を感じる。世界的に有名なスペインの生ハム「ハモン・セラーノ」は、「山のハム」の意だが、まさにこれは「川口版ハモン・セラーノ」だ。 ※生ハムのカッティングも体験させてもらった(写真下)
山の暮らし再生機構の解散とともに、春日さんは今月で復興支援員の業務を終了するが、引き続き川口に住んで生ハム作りを核に起業する予定だ。
■長岡市への定住・移住
宮さんは地域おこし協力隊の期間中に川口の人と結婚し、現在は川口地域で生活している。春日さんも結婚され長岡在住。過去のブログで紹介した与板の打刃物の後継者、島田さん・似鳥さんも県外から来て、地域に定住し活動している。
新型コロナウイルス禍の影響で、人や企業の拠点が大都市から地方都市に移る「地方分散」が加速している。地域外から来てくれた人──かれらは、外からの見方や見え方を教えてくれる──が地域を盛り上げる人となり、長岡に定住し、活力源になってくれるのはありがたいことだ。かっては、田舎の排他性やムラの縛りを嫌って都会へ出て行った若者が多かった。しかしいま、“どこどこの人”などという出身や出自・所属などの境界をこえて人が長岡に移り住み、新しい地域共生社会が生まれる希望が見えてきた。長岡にやってきた若者を温かく受け入れる市民のみなさんの開かれた感性と受容力こそが地域の宝なのだ、と自慢したいと思う。
関 連 記 事: 「永遠なれ、与板打ち刃物」