5月27日から31日までモンゴルを訪問した。
これは、JICAの草の根技術協力事業として採択された「新潟・モンゴルの産業変革を担う産業 DX人材育成プラットフォームの構築」プロジェクトのさらなる進展に向け、長岡産業活性化協会NAZE、長岡工業高等専門学校、JICAからの要請を受けての訪問だ。
市内企業のデジタル化や人材確保は、長岡市としても、最重要課題の一つである。モンゴルの政府機関・教育機関などの視察や学生との交流を通じて、留学生のインターンシップを促進し、モンゴル人材の就業を加速させる体制整備を進めることが、今回の訪問の大きな目標としてあった。
プロジェクトの概要
【提案団体】長岡市
【実施団体】長岡産業活性化協会NAZE
【協力機関】長岡高専、KDDI株式会社、Mobicom Corporation LLC ほか
【実施期間】令和6年5月~9年4月
【事業規模】3年間で6,000万円
【成果】
実施初年度の令和7年3月、10人の学生が10社(うち7社が市内企業)でインターンシップを実施。10人のうち卒業年次7人の学生が日本での就業を希望し、6人がインターンシップ企業へ就業予定。
(就業予定企業の業種:上下水道処理業1社、製造業3社、建設業2社)
【プロジェクトのイメージ図】

■モンゴル視察
視察団は、長岡産業活性化協会NAZEの大井会長をはじめ、インターンシップ受け入れ企業の代表など、総勢19人。ガントゥムル第一副首相(当時)や、プルプスレン教育相との面談をはじめ、今年3月にインターンシップ生を送り出してくれた3つの高専などで意見交換を行った。


<行程>
日 程:5月27日(火)から5月31日(土)まで 4泊5日
滞在先:モンゴル国 ウランバートル市
視察日:5月28日(水)、29日(木)、 30日(金)
<主な訪問先>
(1)政府関係機関
- 経済開発省(ロブサンニャム・ガントゥムル第一副首相兼経済開発相(当時))
- 長岡技術科学大学に留学経験があり、教育・科学大臣就任時に日本の高専制度をモンゴルに根付かせたきっかけをつくった人物
- 教育省(ナランバヤル・プルプスレン教育相)
- 在モンゴル日本国大使館
- モンゴル国会議員との面会(ガルバドラハ国会議員 ほか)
(2)プロジェクト関係機関
- モンゴル工業技術大学付属高専(IET モンゴル高専)
- モンゴル国立科学技術大学付属高専(モンゴル科技大高専)
- 新モンゴル学園高専(新モンゴル高専)
- JICAモンゴル事務所
- モンゴル日本人材開発センター(モンゴルでの学生の研修に協力)
- モンゴルIT パーク(ベンチャー企業に業務スペースと支援を提供)
- Nashatech(ナシャテック)社(研修プログラムを設計)
<主な視察目的>
①政府関係省庁
- 日本へのインターンシップ、現地人材の送り出し・受け入れについての考え方や意向を確認し、事業への協力を依頼
②プロジェクト関係機関
- モンゴルの経済情勢やIT教育の現状、就職先についての調査
- 関係者との同プロジェクトに関する意見交換・情報共有
- 人材の交流および日本での留学・就労の状況調査


<長岡市とモンゴル高専とのつながり>
- 長岡市が市内企業のDX人材不足の解決に向け、令和5年3月2日から14日まで、モンゴル高専協力支援校である長岡高専へ委託し、初めてインターンシップ事業を実施(過去のブログ参照)
- 新モンゴル高専、モンゴル科技大高専、モンゴル高専の学生8人が市内企業8社でインターンシップを実施
- 令和5年3月27日 JICA草の根技術協力事業(地域活性型)に採択
- 令和6年度本格始動し、令和7年3月に10人の学生が市内企業を中心とした10社でインターンシップを実施
■モンゴルの印象
日本では大相撲等を通じてモンゴルに親しみを持っている人も多いのではないだろうか。モンゴルでは、文化・スポーツ交流を含め高い親日感情が醸成されている。日本はモンゴルに対する最大の支援国であり、技術支援など多様な支援を行なっている。
また、モンゴルは日本にとって重要な「特別な戦略的パートナー」であるとともに、日本語とモンゴル語(キリル文字)は文法的に親和性が高く習得しやすいほか、ともにアジア北東部にルーツを持ち、顔つきが似ていて親しみやすい国だ。
モンゴルに着いてまず驚いたのは、首都ウランバートル市内のすさまじい渋滞と走っている車の9割が日本車(ほぼプリウスの中古車)だということだ。料理はなんといっても羊を中心とした肉料理がメインで、野菜は中国からの輸入中心。
7月6日から天皇皇后両陛下のモンゴル訪問もあり、モンゴルがより一層注目されることだろう。
モンゴル国 | 日本 | (参考)ベトナム | |
---|---|---|---|
国土面積 | 156万4,100㎢ (日本の約4倍) | 37万8,000㎢ | 32万9,241㎢ |
人口 | 350.5万人 | 1億2,455万人 | 1億30万人 |
GDP | 約2兆9072億円 | 605兆473億円 | 約61兆4,900億円 |
1人あたりGDP | 84万125円 | 483万6,546円 | 61万2,755円 |
■視察の成果と今後の展開
ガントゥムル副首相(当時。その後政変があって辞任)や政府機関との面会においては、 産業DX人材育成プロジェクトの進捗状況を報告し、プロジェクトが双方の人材育成や発展に貢献するものであり、一層の協力と事業を推進することを確認した。
モンゴルの若者が長岡で学んだ後、モンゴルに帰り、国を引っ張る人材となってもらうという、「米百俵の精神」が息づく長岡だからこそのプロジェクトであることをPRしてきた(ガントゥムル副首相訪問の様子はこちら)。
ガントゥムル副首相においては、長岡技術科学大学に留学経験があるため、長岡への強い愛着を表明されていた、モンゴル学生の受入環境の充実への期待を示され、留学生時代にお世話になったボランティアグループ「むつみ会」への寄附金を託された(むつみ会の皆さんへの贈呈式の様子はこちら)。


モンゴル3高専での、今年度のインターンシップ説明会には300人の参加があった。私も学生の皆さんへ本プロジェクトへの参加を呼びかけた。
市は、外国人材の就労・雇用に関する相談・支援を担う外国人材受入サポートセンターや、モンゴル高度人材をサポートする地域おこし協力隊2名による支援体制を確保する。また、NAZE、長岡高専などの関係機関と連携して、高度外国人材の市内企業での受け入れ、就業を促進し、両国の発展につながる継続的な人材還流モデルの構築を目指す。


長岡には、全国に先駆けて平成13年にオープンした長岡市国際交流センター「地球広場」があり、外国人市民の生活相談や自立支援・国際理解などの拠点として広く親しまれてきた。
長岡の「地球広場」は、JICAが東京に「地球ひろば」を開設する際に参考としたものであり、長岡市国際交流センター長であった羽賀友信さんが中心となって、JICAとも連携しながら育ててきたものだ。「地球広場」は、来年秋にオープンするミライエ長岡東館に移転する。多文化理解や外国人支援、交流の場として活用する予定である。これら一連の取り組みによって、長岡は外国人材の受け入れや多文化共生を進めていく。
関 連 記 事 : キルギス、ベトナム、モンゴル キルギス訪問 多文化共生とグローバル人材
タイトル画像 :
モンゴル工業技術大学付属高専(IET高専)
インターンシップ説明会に参加してくれた学生たちと記念撮影