20年前に11市町村が合併した長岡は、各地域に独特のイベントがあって、四季折々の楽しみが盛りだくさん。

秋の訪れを感じはじめた 9月の終わ りに栃尾地域で催された、「トチオノアカリ」もそのひとつだ。

■トチオノアカリから広がるアートな世界

トチオノアカリ」は、地元有志による協議会が毎年企画・運営するイベントで、今年で10周年を迎えた。

趣ある雁木が連なる谷内通りや秋葉神社、秋葉公園、常安寺などを会場に、繊維産業が盛んな栃尾地域ならではの「糸繰(いとぐり)木枠」で作った約1,400個のランプや光のアート作品が街を彩り、幻想的な空間が人気のイベントだ。

夜が更けるに連れて、アカリを見に来る人に加え、ナイトマルシェで飲食を楽しむ人も増え、子どもから大人まで多くの人で賑わっていた。

「トチオノアカリ」に合わせて、アートに触れるイベントも開催された。
谷内通りにあるギャラリー白昼堂堂では、栃尾出身のLICACOさん(東京芸術大学大学院生)の個展が開催された。LICACOさんは、中学3年時に「栃尾を明るくしたい」と考え、「トチオノアカリ」を発案した人でもある。このたび10周年を記念し、協議会から声がかかり、個展を開催する運びとなった。

会場には「人間のいとおしさや不完全さ」をテーマにした14点が並び、独特の世界観やメッセージ性が多くの人を惹き付けていた。

また、長岡造形大学出身で「廃材再生師」の肩書を持つアーティスト・加治聖哉さん(過去のブログ参照)の作品も谷内通りの空き店舗に展示されており、アカリと共に多彩な魅力を放っていた。開館30周年を迎えた栃尾美術館では、イベントとコラボして開館時間を延長。「トチオノアカリ」を見に来た人が、開催中の写真展「138億光年 宇宙の旅」を一緒に楽しめるナイトミュージアムを実施した。

「トチオノアカリ」の来場者は年々増加しており、今年は2日間で12,000人が訪れた。地域ゆかりのアーチストなどさまざまなアートに触れることができるのも人気の要因だろう。

10周年を迎え、協議会の皆さんは、「持続性を高める取り組みや他地域との連携など、新たな試みにチャレンジしたい」と語る。人口減少や少子高齢化による担い手不足により、地域イベントが縮小や中止を余儀なくされてゆく中、「トチオノアカリ」の盛り上がりはとてもうれしい。

■秋葉神社の新たな魅力

今年8月、『秋葉三尺坊の大冒険』という小冊子(コミケ本?)が発刊された。
著者は長岡市出身の遠藤諭(さとし)さんで、日本を代表するパソコン雑誌『月刊アスキー』の編集長を務めたIT界のカリスマ的人物だ。

秋葉三尺坊は、秋葉神社で祀られている秋葉三尺坊大権現のことで、三尺坊が修行の末に神の姿となり、火伏せの神、いわゆる火災を防ぐ神として広く信仰され、江戸時代初期から中期かけて全国に広がり、神社の数は2万7千に及んだという。
また、秋葉神社は、静岡県の「秋葉山本宮秋葉神社」と栃尾の秋葉神社を二大本山とされ、東京の「秋葉原」の語源は「秋葉神社」に由来することを分かりやすく紹介している。

▽栃尾の秋葉神社について(クリックで開閉)

現在の建物は安永5年(1776)に建てられたもので、平成8年(1996)に一部改修された。奥の院は建物自体が入念で美しい。また、「日本のミケランジェロ」と称えられる石川雲蝶作の彫刻が見事で、拝殿・奥の院とも市文化財に指定されている。

秋葉原といえば、もともとは日本一の電気街として知られ、IT関係者にとっても必要なパーツなら何でも手に入る街だった。その後、アニメや漫画などの聖地としても世界的に有名になった現在に至る。秋葉原のルーツともいえる栃尾の秋葉神社に、多くの人が訪れる仕掛けができないだろうか?
すでに栃尾地域でもこの冊子は多くの人の目に触れており、「トチオノアカリ」の関係者からは、「秋葉三尺坊を切り口に、秋葉原からの聖地巡礼を視野に入れ、何かアニメなどで盛り上げることができたら」との声が聞こえてきている。

謙信の旗揚げの地として知られる栃尾地域には、美術館があり、レトロモダンな雁木通りがあり、神社や寺、それらを活かした「トチオノアカリ」もある。
今後、地域のみなさんと力を合わせ、アニメや漫画の聖地・秋葉原とつなぐ仕掛けで、栃尾の魅力を向上させていきたい。

   関  連  記  事 :  栃尾美術館にようこそ! 与板の歴史、よいたの宝 歴史文書アーカイブ〜未来のために

 

 タイトル画像 : 

「糸繰木枠」のランプで街を彩るトチオノアカリ