公共交通の維持は、地方都市にとって共通の政策課題となっている。
地方でバスや鉄道在来線の維持が困難になってきたのは、 車社会の進展による ところが大きい。それに拍車をかけたのが、過疎化だ。一方、人口密度の高い大都市圏は乗客が多い。採算性が維持されているため、公共交通の利便性も保たれている。車中心の地方と、公共交通中心の大都市。二極化しているのが日本の現状だ。
長岡においても、若年層の少子化に伴う減少、東京一極集中による流出、健康寿命の伸びによる高齢者の自家用車利用の増加などにより、路線バスの利用者数が年々減少傾向にある。
平成29(2017)年 | 令和4(2022)年 | |
路線バス利用者数(1日あたり) | 15,089人 | 11,068人 |
交通事業者にとっては、乗客が著しく減少した場合、減便(運行本数の削減)や路線の廃止も、経営上はあり得る判断となる。市としては、赤字路線の損失補填(補助金交付)をして路線の維持に努めているところだ。
乗客が極端に少ないバスが走っている実態もあるなかで、今後も続く人口減少を考えると、バス路線の維持は楽観できない。市民の足として必要な公共交通を、どのようにして維持継続していくかは、困難な課題となっている。
今回は、長岡における公共交通の利用促進についてである。
■ 2024年問題
本年4月からはトラックやバス、タクシーなどの自動車運転業の時間外労働(残業)の上限規制や拘束時間・休息時間の規制(改善)が適用され、運転士不足の一層の深刻化が懸念されている。いわゆる「2024年問題」だ。この影響でバス運行本数の減便から乗客減少へという悪循環に拍車がかかるおそれが出てきた。
そこで市は、昨年3月に地域公共交通計画を策定し、だれもが安心して利用できる公共交通網の構築などを柱に、さまざまな施策を進めている。以前のブログで紹介したデマンド型乗合タクシーの実証実験・本格導入の取り組みもその一つだ。今後も、新たなサービス・技術を導入してバスの利便性を高め、利用促進を図る必要があると考えている。最近の取り組みを紹介しよう。
■路線バスをもっと便利に
① 機能拡充! ながおかバスi のリニューアル
3月1日、路線バス接近情報サイト「ながおかバスi」をリニューアルした。
これは平成24年に運用をスタートしたウェブアプリで、路線バスが今どこを走っているか、スマホでリアルタイムで確認できるシステムだ。各路線の時刻表も検索できる。
今回のリニューアルで機能を拡充。これまではバス停名で検索する必要があったが、世界標準の公共交通データフォーマット(GTFSデータ)の採用によって、地図上でバス停をタップするだけで必要な情報が得られるようになった。データはオープンデータ化されているので、他の経路検索サイトやアプリ等への活用も期待できる。
ながおかバスiの使い方を説明した動画はコチラ。
今回のリニューアルにより、普段利用しないバス停の選択(検索)も便利になり、観光・ビジネスで来た人のバス利用の促進が見込まれる。
運行中の便だけでなく、運行予定の便の情報も表示されるようになったので、ご活用いただきたい。
② 通勤・通学におすすめ「スマホ定期券」
3月21日からは「スマホ定期券」アプリの運用が始まった。(導入には市・県が開発費用の一部を補助している。)
バス利用の際、降車時にスマホ画面を見せるだけ(トップ画像)と、非常に便利だ。定期券の購入もスマホからできるようになった。
事業者にとっても、窓口混雑の緩和やキャッシュレス決済による業務効率化につながる。進学・就職などで長岡での新生活を迎える方も、ぜひスマホ定期券を活用していただければと思う。
■県内初!路線バスにEVバスを導入
昨年3月、越後交通㈱が中央環状線「くるりん」にEV(Electric Vehicle:電気自動車)バス2台を導入した。既にこの鮮やかな緑色の車両に乗ったことのある方も多いのではないだろうか。
多くの方がEVバスに乗車し目にすることで、環境にやさしい交通サービスの普及と脱炭素社会の啓発につながることから、市はバスの導入費を支援している。導入開始から一年が経過し、CO2の排出削減量は年間およそ52t※が見込まれ、燃料費の削減効果も期待できる。
※スギ5,900本が吸収するCO2量、自家用車40台分のCO2排出量に相当
運行にあわせて市と越後交通は「バスを活用した災害連携協定」を越後交通と結んだ。このEVバスには、スマートフォン約25,000台分の充電が可能な大容量バッテリーが搭載されている。
災害時の大規模停電の際には、EVバスが避難所等へ派遣され、電力を供給する。
自動車の保有が、一家に一台から一人に一台へといわれて久しい。人口減少も進み、バス・鉄道・タクシーの利用客の増加は見込めない状況にあるが、市は引き続き公共交通の維持に力を入れていく。
それとともに、自動運転やMaaS、ライドシェアなど、新技術・サービスの導入も視野に入れ、市民の生活の足の確保に取り組んでいきたい。
関 連 記 事 : デマンド型乗合タクシー
タイトル画像 :
「スマホ定期券」使用イメージ。(市政だより3月号に掲載)
バスを降りる際にこの画面を乗務員に見せるだけでOK!