地域おこし協力隊をご存じだろうか?

地方の活性化を目的として、 国が導入した制度で、令和4年度は全国で6,447人の隊員が活動している。総務省 ではこれを令和8年度までに10,000人とする目標を掲げ、さらに増員していくこととしている。
今回は長岡市の地域おこし協力隊を紹介しよう。

 

■人口減少と地域おこし協力隊

 

2月27日、厚生労働省が人口動態統計の速報値を発表した。

令和5年の日本の出生数は758,631人で過去最少8年連続で減少しており、前年比では5.1%減。出生数から死亡数を引いた自然増減数は831,872人で、過去最大かつ17年連続の減少だ。もちろん、新潟県も例外ではない21,894人の自然減となっている…。

 

長岡市では、これまで若者や女性の働く場の創出、外国人材の確保、ⅮXの推進などに取り組んできた。

そして、特に過疎化・高齢化が進む地域の活性化を目指して導入してきたのが「地域おこし協力隊」だ。

地域おこし協力隊は、都市地域から地方(人口減少や過疎化が進行する地域)に移住し、地域おこし活動や農林水産業への従事、住民支援等の地域協力活動をしてもらいながら、当該地域への定住・定着へとつなぐ取り組みである。

隊員は地方自治体が任命し、任期は原則3年。隊員たちの新たな視点や熱意が、地域に刺激を与えてきた。のみならず、行政では行き届かないきめ細やかで柔軟な地域おこし活動と、隊員の定住による地域活性化が期待されている。

 

中澤泉さん(右から2人目)  山古志地域で観光コンシェルジュとして、地域の観光コンテンツの整理や情報発信、観光メニューの企画などを行っている。写真は山古志のインバウンドツアー
奈良場晃大さん  栃尾地域で地元産ワインを中心とした地域物産の情報発信と、ワイナリーの設立に取り組んだ。退任後は、とちお農園で醸造を担いつつ、出身地である三島地域で酪農継業とワイナリー設立を目指している

 

 

 

■ 50人以上も活躍!

 

長岡市では平成28年度から地域おこし協力隊を導入している。現在活動中の人も含め、3月1日時点で、すでに計51人が協力隊員として活躍してくれた(現在活動中の隊員紹介はこちら)。

 

【任用実績(令和6年3月1日時点)】

地 域 等 人 数 活 動 内 容(主な例)
  越  路 人   観光や食イベント企画
  山 古 志 人   地場産品販売促進
  小  国 人   よったかり場立ち上げ
  寺  泊 人   スポーツイベントの企画
  栃  尾 人   空き家の活用
  与  板 人   打刃物技術の伝承
  川  口 人   NPO法人の活動支援
  全  域 人   スマホ教室、eスポーツの企画
 その他(産業、大学等) 19人   企業と大学等の連携支援等
51人   (男性31人、女性20人)

 ・平均年齢(着任時):31.9歳
 ・年代別内訳(着任時):20代30人、30代9人、40代5人、50代4人、60代3人
 ・定住状況:退任35人、うち定住21人(定住率60.0% うち市内起業9人、市内就職12人)

 

退任後、6割の人が市内に定住している。市民と結婚した人も何人かいて、喜ばしい限りだ。

また、隊員活動の経験を生かして、市内で起業や就職をした人もいる。隊員として長岡に来て、退任後も定住・活動してくれている方たちが、継続して地域活性化の大きな力になってくれていることに感謝したい。

 

 

 

■活動も可能性も広がる協力隊員

地域おこし協力隊の設立直後は、中山間地などの地域づくりに従事してもらう隊員が主だった。しかし近年、活動の幅が広がり、長岡全体のまちづくりや課題解決活動に取り組む隊員も多い。 

新潟アルビレックスBBとバスケットボールを通じた市民協働のまちづくりを推進する隊員や、NaDeC Baseナデックベースで産学協創のコーディネーターとして活躍する隊員、多世代交流を通じたデジタルデバイド対策を企画・運営する隊員等、活動分野は実に多岐にわたっている。

吉岡瞳さん アルビBB選手の小中学校訪問やイベントなどをサポートしている。
上田夏子さん(後列左から2番目) NaDeC構想の推進に取り組む。写真はサポートした学生企画の留学生との交流会。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また令和2年度から、現役の学生を地域おこし協力隊(半学半域型)に採用し、大学での研究や得意分野を生かして、学生ならではの新しい発想で地域の課題解決に取り組んでもらっている。

 

熊木七菜子さん(長岡造形大学大学院生/半学半域型の協力隊員) 地域資源を題材にしたおもちゃの制作や展示会、ワークショップの開催を行う。長岡の特産品をプラモデル化し配布して好評を得た。写真はかぐら南蛮味噌のプラモデル。
佐々木茉歩さん(長岡造形大学大学院生/半学半域型の協力隊員) いなりずしを食べながら話をするコミュニティカフェ「居なりすん」運営中。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新年度には、地域おこし協力隊員をさらに増員する。市全体で50名配置する予定だ。

アーバンスポーツの普及啓発や移住定住の推進、中高生向けの人材育成、外国人材の活用・受入支援など、新たな分野でも隊員を募集し、人口減少対策や地域課題の解決に向けて態勢を強化する。

隊員という市外からの人材の斬新な考えや行動は、長岡にこれまでにない価値観やにぎわい、新たな交流を生み出してくれる。

これからも地域おこし協力隊員とともに、更なる地域活性化を図っていく。地域のみなさんも、よろしくお願いします!

 

   関  連  記  事 :  ポストコロナの地域活動

 

 タイトル画像 : 川堀龍さん(任期R5.7.10~活動中)

中山間地域のコミュニティセンターなどで、スマホ相談所・教室の開催を行っている。