感染禍下での生活も2年半。ただ自粛、ただ我慢にも限界がある。ここは「災い転じて福と為す」という発想の転換が必要だ。
自粛生活の中で 「 健康な生活 」への関心が高まっているようだ。自然豊かな地域で暮らすことの価値が改めて評価されている。一方、「自然豊かな地域」は、過疎高齢化が進んできた地域でもある。住民が安心して暮らし続けられるインフラや地域コミュニティの強化、集落を支える仕組みづくりへの支援が欠かせない。これらの充実があってはじめて、新しい価値観と地方分散による移住・定住が進むと考えている。
そこで今回は、市が進めてきた集落支援の取り組みをご紹介したい。
■ 地域に寄り添う活動
人口減少にともない、地域を支える人も減ってきた。それを補う目的で、現在11名の集落支援員を各地域に配置している。支援員は、保健師と連携した見守りや困りごとの相談などを行い、高齢化する住民に寄り添い精力的に活動している。
また、住民が気軽に立ち寄れる「よったかり場」を開設している。ここでは、感染防止対策を講じてお茶会などが開かれている。2017(平成29)年に小国の八王子地区で開設されて以降、順調に増え続け現在13か所となった。運動機能向上講座や栄養士を招いた講習会など、集落や地域ごとに特色ある活動が展開されている。
■ ICTの活用
過疎地域の見守りやコミュニケーションにこそ、スマホやインターネットが有効だ。
もちろん、高齢者=スマホもパソコンも苦手(というか使えない.. ) という問題がある。しかし「高齢者にスマホは無理」というのは偏見だ。いま、団塊の世代が後期高齢者になってきており、ICT(=情報通信技術) の活用も自然な流れになっている。無理なく積極的に活用していこう。
令和2(2020)年9月に、栃尾地域に新規オープンした2か所のよったかり場で、AIスピーカーの操作体験会を開催した。参加した60~80代の住民約20名からAIとの会話や山古志地域の方とのビデオ通話などを体験してもらい、機能や利便性を感じていただいた。
昨年(令和3年)は、和島地域と寺泊地域でスマホ教室を開催した(高齢者対象、延べ約60名が参加)。いっしょに集落支援員も参加し、高齢のみなさんのアフターフォローも行っている。これをきっかけに高齢者同士で操作方法を教え合い、関わり合いのなかで、今後、地域内でICTの活用が広がっていくようにと活動してゆく。
この教室は、長岡を拠点にデジタル支援を手掛ける「株式会社雷神」(長岡高専生の学生ベンチャー)が運営している。若者がこうした地域課題をテーマに起業してくれたことを頼もしく感じる。今年度は、実施地域を増やすとともに、地域の中学生の協力を得るなどしてデジタル支援の“輪”をさらに広げていく予定だという。
さらに──
今年度は、ICT活用の下地作りをもっと進め、健康維持や見守り場面での活用の実証実験に入る。体調が悪い時にボタン一つで知らせることのできる通報装置や、自宅内の活動センサーで、別居親族や集落支援員につなげておく仕組みがあれば、支援者は手元にあるスマホの通知で気づくことができる。現実的で効率的な高齢者を見守る仕組みづくりが、ICTで実現できるのだ。
高齢者の見守りは、本人の自助努力と家族の責任が出発点だ。その上で、地域の助け合いと行政による支援体制=地域共生社会の構築が課題となる。さまざまな試行錯誤を行いながら、長岡の市民一人ひとりが最後まで自立して生きられるよう相互支援を支援し、住みよい地域づくりを進めていく。
有志の市民のみなさんも是非ご参加を!
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タイトル画像: 川口地域木沢地区の美しい棚田風景