長岡市は、2021(令和3)年度から 市独自の「Edu-Diver構想」をスタートさせた。
構想を推進するICT導入のため、 児童生徒にタブレット端末(全市立小中学校/1人1台)を配布。子どもたちには抵抗なく受け入れられ、「授業イノベーション」が進んでいる。そして今やタブレットは、学校行事やさまざまな教育活動で日常的に利用され、活用範囲がどんどん広がってきている。
そこで今回は、教育DX(デジタル技術を活用した変革)の推進についてのエントリーである。
■タブレットが家でも使えて便利に
昨年10月から、家庭へのタブレット端末の持ち帰り※を開始した。家庭学習や学校との連絡ツールとなり、子どもたちが独自に使いこなせるようにもなってきた。
※小学校3年生以上。1,2年生は各学校の判断で実施
【活用事例】
・自分のペースや習熟度に合わせて取り組めるデジタルドリルによる家庭学習
・授業の振り返りや次の授業に向けた事前課題をタブレット端末で提出
・タブレット端末を用いた調べ学習
・家庭での取り組みを画像や動画で提出する課題の実施
こうした活用によって、家庭での学習を深め、幅を広げ、学びの楽しさやリアリティがもたらされる。授業との連続性があるので、とても意義ある学びになるという。教師や保護者からは「タブレットを使うことで自主的・意欲的に家庭学習に取り組むようになった」「子どもの情報収集・活用力が高まっている」との声が聞かれた。保護者の理解・協力をいただきながら、さらに授業と家庭学習の相乗効果を生む工夫をして、学びと実践をらせん状に上昇・発展させていけたら理想的だろう。
■きめ細かな個への対応へ
タブレット端末の持ち帰りを進める大きな目的の1つは──学校での学びの枠を超え──子どもたち一人ひとりの興味・関心に応じた学びを実現することにある。
そこでまず昨年11月、長岡独自の学習コンテンツや体験活動等の情報を発信するWebサイト「長岡式双方向型教育情報プラットフォーム」を立ち上げて試験運用をスタートした。子どもたちはもちろん、教師や保護者も長岡のさまざまな情報やコンテンツ──動画が満載!──にアクセスできる環境を整えた。
現在、プラットフォーム上に「学びのとびら」を開設し、長岡をよりよく知り、興味を深めることができる動画を幅広いジャンルから揃えている。もちろん授業での活用を想定していて、早速子どもたちは、興味・関心に応じて動画を視聴し、パティシエ、漁師といった職業体験動画や、長岡のものづくり技術を紹介する動画が人気になっている。今後オリジナル動画も追加していくことにしている。
このプラットフォーム上のコンテンツは、インターネット上で公開されているので、世界中のだれでも見ることができる。今後、コンテンツには海外の話題や姉妹都市との交流なども載せていくので、子どもたちにとっては世界につながる窓にもなり、まさに“グローカル”※な学びの場となる。その中で自分の興味や適性を“自ら”探っていってくれることを期待したいと思う。※ グローカル=グローバル+ローカル
ICTは、教師が児童生徒一人ひとりの個性を尊重して伸ばすことを容易にする。多様な選択肢の中からより良い関わりができるよう、長岡市教育委員会はただいま奮闘中である。ご期待いただきたい。
■さらにリアルな学びを「子どもラボ」との連携で
子どもと保護者が一緒に体験できるイベントや活動を紹介し、申し込める「体験のとびら」も準備する。
かねてから周知の通り、7月22日(土)、「米百俵プレイス ミライエ長岡」が先行オープンを迎えるが、ここに、学校にない新しい学び、長岡ならではの学びをコンセプトにした「子どもラボ」──さまざまな団体と協力体制を組み、ワークショップやプログラムを展開──も始動する。放課後や休日にも多彩な学びが提供できるはずだ。「長岡式双方向型教育情報プラットフォーム」はネットコンテンツであるが、この「子どもラボ」との連携によって、「あー、そうか」と腑に落ちるような実際の体験とリンクできるように企画したい。
■ プラットフォーム充実にご協力ください!
プラットフォームの立ち上げにあたっては、地元企業や市内4大学1高専、小・中学校の関係者等からなる推進委員会で準備を進め、運用が始まった現在もコンテンツの検討や制作が進行中だ。参加した企業や大学からは、「イベントや体験活動の案内や周知が課題だった。プラットフォームがあれば、周知が容易になり参加も増える」「子どもたちに関心を持ってもらえるコンテンツを考えたい」などと前向きな声が寄せられている。
いま、Webサイト「長岡式双方向型教育情報プラットフォーム」では、「授業のとびら」と「職業のとびら」に掲載するコンテンツを募集している。生の教材となる 職場体験や企業見学、出前授業の情報をお寄せいただきたい。各企業や団体で個別にアップするよりもプラットフォームに一括掲載されることで注目度が上がるというメリットもある。申込みは画面からできるので、みなさんご活用を!!
(詳しくはこちら)
■ 4月から本格運用
2020年の1人1台ダブレット端末導入開始以来、教育DXによって、長岡の教育のイノベーションは待ったなしに進んできた。形だけでなく、内容を充実させていきたいと考えている。学校外での学びの場(機会)を増やし、世界へとつながるプラットフォーム(英語のパラレルサイトもつくれたらいいなと思っている)のコンテンツをオール長岡で育てて、長岡の子どもの可能性も伸ばしていこう。多方面からの協力をお待ちしている。
「長岡式双方向型教育情報プラットフォーム」の本格運用は4月からとなっている。
関 連 記 事 : 教育構想“エデュ-ダイバー” 図書館の進化、市民とともに スクールICT
タイトル画像: タブレット端末を活用した「総合的な学習の時間」の授業の様子(中島小学校)。記事中の2枚目も同小学校。
将来の夢の実現に向けた計画を発表するため、プレゼンテーションソフトを用いてスライドを作成している。子どもたちは図形の描写や文字入力など集中した様子で(写真は4年生)、いきいきと発表用スライドの作成に取り組んでいる。