不登校の子どもたちが増えている。文部科学省の調査によれば、昨年度の不登校(年間30日以上の欠席)の小中学生は約29万9千人で、6年連続で過去最多となった。
※令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査

昨年度の長岡市の不登校児童・生徒数は521人。国・県より下回っているものの年々増加している。

 

 

 

 

 

 

 

不登校増加の理由として、新型コロナウイルス禍の休校による生活リズムの乱れ、学校行事などの活動制限による交友関係の変化、感染禍が明けても交友関係がうまく形成できない、などの指摘がある。

しかし、もともと不登校は学校生活に起因するものだけでなく、社会全体のあり方や状況、価値観の変化など、こどもを取り巻くさまざまな環境変化が影響していると考えられる。

長岡市では、一括りにはできない複雑な事情に配慮し、子ども一人ひとりの状況に応じた不登校児童・生徒への支援の充実に力を入れている。その一部をご紹介したい。

 

 

■求められる学校内・外の支援の充実と連携

 

不登校を未然に防ぐには、学校と子どもたちの関係性をしっかりと保つことが重要である。
市内の学校では、教室に入りづらくなった子どもたちのための居場所「校内教育支援センター」を設けている。そして、放課後の個別学習、家庭訪問、一人一台端末を用いたコミュニケーションなど、あらゆる方法で児童・生徒とのつながりを維持継続する努力が日々続けられている。
「心ふれあい相談員」の学校への派遣は、長岡市独自の取り組みで、子どもたちが気軽に相談できる体制をつくってきた。

さらに、こうした学校内の支援に加えて、学校外においても多様な支援を充実させてきた。子どもたちを取り巻く環境が変化し続け、不登校の要因が多様化・複雑化している状況があるからだ。学校内・学校外、双方での取り組みが両輪となり、カバーし合うことが不可欠と認識している。

 

■ 新たな居場所ほっとルームがオープン

 

不登校や学校に通うのが困難な児童・生徒の居場所として、市内4か所に教育支援教室フレンドリールームがある。個々への学習支援・子どもたち同士の遊びや交流・教室外での体験活動などカリキュラムに基づき集団活動も経験する場となっている。

もちろん、集団での活動や交流が難しいという子どももいる。フレンドリールームに通わず、自宅・家族以外との関わりや居場所を持たない状態にあることが大きな懸案となっていた。増える一方の不登校を減らすためには、学校や各種支援機関とつながりがない子どもたちを支援に結び付けることがとても重要だからだ。

この課題に応えて開設したのがほっとルームである。今年9月、新たな居場所として教育センター内にオープンした。

学習・遊び・くつろぎの各スペースを設け、子どもたちの自立につながるよう、利用する時間や活動内容などを子ども自らが決めて過ごす場であるのが特徴だ。タイトル画像は、ほっとルームの利用案内である。イメージが伝わってくるだろうか?「だれひとり取り残さない」そんな、教育現場の気持ちと努力が伝わることを願っている

 

ほっとルーム内の様子。自立支援コーディネーターなどが常駐し、利用者の見守りなどを通して、社会的自立に向けた支援を行っている

 

 

ほっとルーム開設から2か月、延べ100人を超える子どもたちが利用した。子どもたちは、ホワイトボードに絵を描いたりジグソーパズルで遊んだり、集中して勉強に取り組んだりするなど、思い思いの活動をして過ごす。中には学年の垣根を越えて交流する様子も見られるという。長時間滞在する子ども、ほぼ毎日通う子どもも多く、安心できる居場所となっているようだ。

のびのびと時間を過ごしながら心のエネルギーを溜めていき、他者や社会との交流のきっかけを見つけてもらい、少しづつ社会的自立に進んでいく場としていく。

 

 

■ 相談から支援までワンストップ ~子ども・青少年相談センター~

 

市では、子ども・青少年相談センター教育センター1階)で、子どもと保護者からの悩みや不安などの相談を受けている。対象は小・中学生だけでなく、20歳未満の青少年までとしている。専門の相談員や臨床心理士が相談者に寄り添い、想いを大切にしながら一緒に解決に向けて進んでいく、ワンストップ型の体制を整えている。


同センターに寄せられる相談は年間で300件を超え、そのうち不登校に関する相談が全体の約6割を占める状況だ。

こうした状況を受け、今年度から不登校に特化した相談窓口を設けることとした。同時に、支援を強化するため、不登校を専門に対応する「自立支援コーディネーター」と「スクールソーシャルワーカー」を新たに配置した。

自立支援コーディネーター
 ・適切な支援策を考え、フレンドリールームやほっとルームの利用案内・調整を行う。
 ・学校に出向いて子どもの様子を先生と情報共有、関係者と支援策の協議など

スクールソーシャルワーカー
 ・社会福祉士精神保健福祉士の資格を有する「つなぎの専門家」
 ・市の関係部署、福祉部門、医療機関、児童相談所などとのネットワークを活用し、
  必要な支援につなげるなど、子どもの置かれた環境への働きかけを通じて問題解決を行う。

これら専門スタッフの配置によって、より適切な支援と対応のスピードアップが実現する。加えて、支援につながっていない子どもにアプローチする「アウトリーチ」型支援の強化も図られている。

 

これからも一人ひとりの子どもに応じた個別対応、多様な居場所、多様な学びの環境づくりをたゆみなく進めていく。何より、子どもに寄り添うことを第一に考えよう。この目標を明確にしておけば、保護者・学校・支援機関が一体となった支援は揺らがない。

未来ある子どもたちの自立と健全な育成を支えていこう。

 

下の画像は「子ども・青少年相談センター」利用案内パンフレット
令和2年4月開設の同センターでは小学生から20歳未満の子ども・青少年の相談と支援をワンストップで行う
 

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   関  連  記  事 :
 教育DXでグローカルな学び! 虐待防止をネットワークで1

                
 タイトル画像:
「ほっとルーム」利用案内パンフレット。不登校で自宅にこもりがちな子どもの新たな居場所として、今年9月4日、教育センター内に開設