平成28年から毎年、長岡市ではアール・ブリュット註1)の展示を行っている。どの作品の作者にも障害がある。彼らの感性と日常や暮らしぶりなどを知ってもらい、理解を深めてもらおうと始めたものだが、実際に足を運んでみたみなさんは思いがけない体験──作品が、観るものを揺さぶるような──をすると思う。

今年度は、街を歩く人がいつでも作品を鑑賞できるよう「まちかどギャラリー」と題して、4つの会場で同時開催している。
 期 間: 〜12月22日(火)まで
 会 場:アオーレ長岡/市民センター/さいわいプラザ/トモシア

 

若狭浩吉さん作「弱さとは何か」(左)「大いなるモノに一歩近ずく」(右)
石川武さん作 「サンファンバウテイスタ号 ローマに向けた慶長使節団の帆船」

鍼灸院を営む若狭浩吉さんは、40歳のときに緑内障を患い、現在は目の見えない中で絵を描いている。描くことが自分の存在 (無意識の自分)を確かめるすべになっているという(アオーレ長岡に作品展示中)。

 

さらに、今、障がいや病気で 社会で働くことが難しい人たちが、アール・ブリュットの商品化・販売によって収入を得られるようにする仕組みづくりが現在進行中だ。
佐々木守さん (社会福祉法人中越福祉会勤務,長岡市出身)は、アール・ブリュットをあしらったマスクと傘の商品化を企画。新たなビジネスモデルとして評価され、「JCI JAPAN TOYPトイップ 2020註2)」(主催:日本青年会議所)の衆議院議長奨励賞を受賞し、先日、報告に来てくれた。

 

デザイン性が高いマスクは、市内外の美容室や飲食店で使われているとのこと。商品は「みのわの里工房こしじ」で販売している。また、マスクはオンラインショップでも取り扱っている。

 

「アートの力を活かした事業」のこれからに大いに期待しよう!

 

註1) アール・ブリュットとは──
アールArtは「芸術」、 ブリュットBrutは「加工されていない」という意味のフランス語で、「の芸術」とも呼ばれる。「作家」の活動というよりも、日頃の何気ない生活や家族・支援者との関係の中から生まれたもので、専門的な美術教育を受けていない人が独自の発想と方法により制作した作品を指す。日本では、障がいのある方が制作した作品を指すことが多く、日本のアール・ブリュットは世界でも高い評価を得ている。

註2) JCIジェイシーアイ JAPANジャパン TOYPトイップ とは──
科学技術・医療福祉・文化芸術・国際交流・国際協力・環境・スポーツ・教育・まちづくり等、あらゆる分野で社会に持続的なインパクトを与える可能性のある傑出した若者(20~40歳)に贈られる賞。青年版の国民栄誉賞ともいわれている。旧人間力大賞。JCI=国際青年会議所

■アール・ブリュット作品展示「まちかどギャラリー」
 展示期間:令和2年11月21日(土)~12月22日(火)
 会場:市内4か所
    ①シティホールプラザ「アオーレ長岡」西棟3階
     8:00~22:00 展示数:5点
    ②ながおか市民センター1階
     平日8:30~19:00/土日祝9:00~18:30 展示数7点
    ③さいわいプラザ1階
     平日9:00~21:30/土日祝9:00~17:00 展示数11点
    ④社会福祉センター「トモシア」1階
     9:00~21:00 展示数10点
 「アール・ブリュット展in長岡withコロナ」として開催
 (主催:なうネット長岡、共催:長岡市・社会福祉法人中越福祉会)

なうネット長岡
 障がいのある方が楽しく安心して過ごせる地域づくりを目指し、平成19年に発足した福祉施設等の職員有志による団体。参加者のスキルアップ、ネットワークづくり、各種イベントでのアール・ブリュット展示に取り組んでいる。https://www.facebook.com/nownet.nagaoka/

 

 タイトル画像: しゅんすけさん作『願いをかけよう 夕潟に』
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