世界は今、新型コロナウイルスの影響で大きく揺さぶりをかけられている。

この先どうなるのか??── 見通しがつかない今だからこそ、一歩でも二歩でも 前へ進もう! 真に必要としているもの・社会が求めるものを理解し、新しいコンセプトで新しいモノやサービス、仕組みを創り出す人材を育てていこう!

AIエーアイIoTアイオーティーといったテクノロジーの進化やDX (デジタル技術による変革)デジタルトランスフォーメーションの進展で、新しい価値を生み出す力 (=デザインの力やデザイン思考など)に熱い関心が寄せられている。イノベーターを求める動きは切実で、急速に社会経済のあらゆる場面に浸透してきているのを感じる。

私も、新分野の事業やベンチャーの経営者、ファンドの運用者などと接するたびに、イノベーターとしての「デザイナーの時代」がやってきたことを強く実感させられている。

ここで言うデザイナーの仕事のテーマは、見た目をきれいに飾ることではない。ユーザからどう思われるか?という視点に縛られず、ヒトや社会が求めているものは何か?それが実際に新しい価値として機能するか?という本質(真に必要なモノ・コト)を実現することである。美しさ(機能美)や心地よさも、真に必要なものの機能を極めたときに実現されるものだろう。

ということで今回は、長岡造形大学をとりあげたい。

■ 公立デザイン大学に期待されること

日本で唯一の公立デザイン系大学である長岡造形大学では、全学生がデザイン思考を学ぶ。長岡高専長岡技科大の技術系研究機関や地場産業との連携には長い歴史があって、イノベーションに欠くことのできない拠点となっている。

造形大 ✕(長岡高専・長岡技科大・長岡大学・長岡崇徳大学+地場産業)

下の画像は高専と造形大の連携授業のワンシーン。造形大のデザイン思考と高専のテクノロジーがタッグを組み、課題を解決する新しい授業形態だ。

初の連携授業 (造形大生7人・高専生8人 )で意見を出し合う。テーマは、デザイン性と機能性を兼ね備えた商品開発と新しい生活スタイルの提案。この日の題材は「ミミズコンポスト(ミミズに生ゴミを分解させて液体肥料を生産するもの)」(NaDeCBASE)ナデックベ-ス

 

長岡造形大学は、平成6(1994)年に長岡市による公設民営のデザイン系大学として開学した。
その後、平成26(2014)年の公立大学法人化を契機に、県外からの優秀な入学希望者が増え(今では県外出身者が8割)、デザインや造形を志す学生が全国から集まる大学となった。

 

 

 

令和3年度 学生数 市  内 県  内 県外・他
学 部 1,039   60   155   824  
大学院 37   21   0   16  
合 計 1,076 人 81 人 155 人 840 人

 

 

■ 地域協創活動

公設民営の大学としてスタートした背景もあり、地域との交流(地域協創活動)や産学官連携の取り組みも積極的に展開してきた。今では、長岡のいろいろな場所・場面で、造形大生が関わった作品、製品、取り組みに触れることができる。

長岡市民は、こういった活動や成果を身近に見たり聞いたり体験できたりする。市民がオープンマインドで大学に関わり、声を届け、一緒に新しい価値を創造していく姿をイメージしていきたいと思う。そのことが、世のための人材を産むNAGAOKA の土壌を豊かにしてゆく。

 

アオーレ長岡のオープンテラスのイルミネーション「やさしさの木」。監修は、長岡造形大学、制作は長岡電気工事組合青年部会&小国和紙生産組合の共作。

 

 

 

■ 未来を眺望する造形大

造形大学では、令和5年度に学科を再編する。「プロダクトデザイン学科」と「視覚デザイン学科」を「デザイン学科」に統合してタテ割り的なマインドを取り払い、「テクノロジー×デザイン」の新領域を設ける。
デザインと科学技術の融合などの教育内容を充実させ、多様化するデザインの世界を、もっと広く、楽しく、フレキシブルに学ぶことのできる場としていく。デザインの大いなる力で、社会問題の解決、経済の発展、地域の活性化に取り組み、新しい未来を担う人材を生み出していくためだ。

造形大の在学生は女性比率が高い。在学生1,000名の75%が女性だ。
日本社会の低迷の原因である既成概念、先入観、既得権益、自己利益中心の行動原理を変えるためには、女性もリーダーになることが最も効果的だし、
必須だ。「デザイン思考を駆使できるデザイナー」、そして長岡造形大学に対する期待はますます高まっていくと確信している。

すでに“未来を創り出すための価値”を生み出すクリエーターや、コーディネーターとして活躍する卒業生が活躍を始めている。長岡造形大学には、社会をけん引するリーダー人材を輩出する大学として、さらに存在感を高めていってほしい。

 

   関  連  記  事:  レッツ!デザイン思考 アートの力  

 タイトル画像:
 NaDeCBASEナデックベ-ス (起業創業の拠点/市民センター地下)の壁面をペイントする造形大卒のグループ「クリエイターユニット401」のメンバー。既存の建物やガラスを活用したデザインで活動の幅を広げている。