高齢者の介護は、本人はもちろん、配偶者にとっても(老老介護!)、家族にとっても大きな課題だ。長岡にとっても、介護サービスの充実は 重要 な政策課題である。このほど、キルギス共和国を訪問したのも、介護業界への人材導入の可能性を確認するのが目的の一つだった。
だれもが「要介護状態にならない」ことが大事だという。
そこで、近年その成果が注目されているのが、各種の介護予防活動だ。あまり症状がでないうちに、ふだんから心身の状態の維持するための適度な運動(アクティビティ)に取り組み、不調を早期に発見して改善することで、将来とも長期にわたって介護を必要とすることなく、住みなれた地域でくらし続けることができる。
長岡市が力をいれている介護予防・生活支援サービス事業には、さまざまなメニューが用意されている。今回はその中から、効果を確認されている軽度者向けの介護保険サービスを紹介しよう。
■短期集中!新しい介護保険サービス
短期の通所型トレーニングで課題解決を目指す、その名も短期集中レベルアップ事業は、事前の自宅訪問で生活環境を確認し、リハビリ専門職の評価のもとで心身の状態を改善する新しい介護保険サービスだ。(※下の画像はクリックで拡大します)
利用者は年々増加傾向にあり、改善率も高い。事業開始から丸6年──、成果が目に見えてきている。利用者宅を訪問してアセスメントするスタイルは、全国的にも例が少なく、先進的な取り組みだ。また、通年での随時受け入れは、県内では長岡がいち早く取り組んだ。利用者のモチベーションが一番高いタイミングで通い始められるのが何より成果を上げているポイントだろう。
論より証拠。利用者の体力向上ぶりをデータで確認してみよう。以下は長岡崇徳大学の分析データ(H29~R2利用分)である。身体機能に顕著な改善が認められた。
利用者数(のべ) :240名 ( 男性42.9% / 女性57.1%・平均年齢81.4歳) ☆イスの立ち座りテスト☆ 平均約1秒の短縮 |
また、昨年利用した90人では、5m歩行の改善が90人中60人(66.6%)、イス立ち座りの改善が90人中57人(63.3%)だった。
平均年齢80歳超えで3か月という短期であることを考えれば、驚くべき成果! 幾つになっても筋肉は努力に応えてくれるようだ。利用者からは、「体が軽くなった」「ひざ等の痛みが軽減された」というよろこびの声が届いている。
■今後の展望
短期集中レベルアップ事業は、旧長岡地域の2法人(長岡三古老人福祉会/ながおか医療生活協同組合)でスタートし、今年度は、栃尾地域でセルフマネジメントに重点をおいた3か月の集合教室型を、試験的に実施している。事業が提供されていない地域の一部でも、筋力向上トレーニング事業を展開している。こちらは事前の訪問アセスメントはないものの、やはり3か月の通所型教室で改善効果を上げている。
正しく成果を上げるためには、専門職による適切なケアマネジメント(ケアプラン作成)が欠かせない。長岡市は、ケアマネジメント能力向上のための研修や相談会を不断におこなっている。引き続き関係者と連携し、フィードバックを重ねながら事業効果の向上に取り組んでいる。
新型コロナウイルス禍により、私たちは健康の大切さを再認識した。高齢者にとっては、介護が必要となる前に、介護予防によって心身状態の維持・改善に取り組むことをお勧めしたい。
ご存じのように、日本は、世界の中でも群を抜いて超高齢社会に突き進んできた、高齢化大国だ。2056年に人口が1億人を割り込む見込みだが、そのあとも高齢化率は伸び続け、なんと2070年には38.7%に達するという… (こちらに掲載の図表1-1-2参照)。この年、総人口がさらに減って9,000万人を割る。
世界は日本社会の行く末に注目しているといって過言でない。日本の後を追って超高齢化社会を迎える国が続々と出てくるからだ。
シニアのみなさん、としだからと決めつけることは全くありません。みんなで力を合わせて、異次元の超高齢社会に応答し、切り拓いていこうではありませんか。
関 連 記 事 : 介護の「長岡モデル」をめざして 長岡介護イノベーション・ハブ
タイトル画像:
【筋力向上トレーニング事業】パワーステーションてらどまり(社会福祉法人 長岡三古老人福祉会)で