長岡の将来は、居住性の向上と産業の発展にかかっている。

現代において、産業(働く場)を創出するには、 モノづくり産業の基盤の上に、ソフト 型の新しい産業集積をつくっていく必要がある。両者が相まって長岡の産業イノベーションが加速することになるはずだ。

今回は、このソフト産業の集積をめざした日本初のイノベーション地区の動きを紹介したい。

■日本初のイノベーション地区を目指して

令和5年7月には、人材育成と産業振興、イノベーションの拠点となる「米百俵プレイス ミライエ長岡」西館がオープン。新しい互尊文庫NaDeC BASEをはじめ、スタートアップやベンチャー企業、産総研等も入居しさまざまな企業人や起業家、研究者が活動している。

また、ミライエのオープンを契機として、中心市街地への企業進出や若者の起業も加速してきた。

令和4年(2022年)3月、長岡市は日本初の「イノベーション地区」創設に向け、内閣府東京大学連携研究機構不動産イノベーション研究センター(CREI)と連携研究協定を締結。デジタル技術の活用やウォーカブルなまちなかの実現、「場の力」を活用してイノベーションを創発する都市(まち)に関する調査・研究などに取り組んできた(過去のブログ参照)。

これまでの実績についておおまかに、以下にまとめておこう。

企業進出

  • 令和5年1年間で、USEN-NEXTHOLDINGSの長岡拠点をはじめ、首都圏企業のサテライトオフィス15社が進出。
  • 米百俵プレイス西館6階コラボレーションオフィスは7社入居。
  • 米百俵プレイス西館9階の貸しオフィスフロアに12社入居(新規8社、市内移転4社)。
  • ミライエの周辺に民間のコワーキングスペースも誕生。

新しい働き方「NAGAOKA WORKERナガオカワーカー」の拡大

  • 令和4年にスタートした「NAGAOKA WORKER」は現在、累計で120人超に。

若者の起業

  • 4大学1高専の学生を中心に、22社の学生起業が実現。近年は女性の起業も活発化。
  • この10年で起業件数は300件、起業支援センターCLIP長岡への相談は3,000件に。

■国際的な専門機関が高く評価

昨年3月、イノベーション地区の国際的な専門機関であるGIIDのラウラ上級研究員がミライエ長岡を視察。ラウラさんは、「イノベーションを生むまちの条件は“グラビティ”=“人を惹き付ける力”があること」と話し、「ミライエは宝石のようで、発想やプログラムが素晴らしく、まさに人を惹き付けている」と高く評価していただいた(過去のブログ参照)。

現在、GIIDのホームページには、世界のイノベーション地区の中で、日本では唯一長岡市が紹介されており、大変うれしく感じている。

■「イノベーション地区」のさらなる展開へ

今年3月、「イノベーション地区」のさらなる展開に向け、ミライエ長岡でシンポジウムを開催した。東京大学CREI機構長・柳川範之さんは「長岡には大きな可能性がある。多様な人が集まって混ざり合い、新しい技術を取り入れることがさらなる発展のポイント」と期待を述べ、同センター特任助教の長谷川大輔さんは市内中心市街地の人の流れや交流を計測した研究結果を発表してくれた。

パネルディスカッションでは、国土交通省国際・デジタル政策課長の武藤祥郎さんをモデレーターに、CREI、(株)第四北越銀行(株)USEN WORK WELL長岡造形大学NTT東日本新潟支店から5人のパネリストが登壇。イノベーション地区としての長岡の強みや可能性、これからのまちづくりに向けた活発な議論やアイデアの共有がなされ、今後の展開に大きな期待が持てる、有意義なシンポジウムとなった。

日本初の「イノベーション地区」創設を目指し、協定を締結してから3年。この日、さらなる展開に向け、協定期間の延長が決定した。

令和8年度には「米百俵プレイス東館」の完成により、ミライエ長岡がフルオープンを迎え、4大学1高専や長岡商工会議所、金融機関、国際交流センターなど、さまざまな分野の支援機関や専門人材が集積する。

今後、中心市街地のイノベーション地区は、東京から新幹線で90分の立地や4大学1高専15専門学校の多彩な人材がいることを活かし、今までの長岡にはあまりなかった企業、例えばAIやインターネットを活用した企業、ソフトウェア開発、新しいサービスを開発・提供する企業を集積させようというもの。若者や女性を含めた多くの人が働く業務地区をつくり、人と企業から選ばれる長岡のまちづくりをさらに進めていく。

   関  連  記  事 :  人を活かして未来を興す/長岡の起業支援 《引力》のあるまちづくり 

 

 タイトル画像 : 

GIIDのHPより抜粋。「イノベーション地区」として掲載された長岡市(赤字は追記分)