遠くの山々からも雪が消え、山菜採りや行楽で山野を歩くによい季節となった。
一方で──、 春は冬眠明けのクマや、イノシシが人里に降りてくる 季節でもある。特に子連れの母グマの出没が増える。現実に、今年も4月末から栃尾地域でクマが目撃された。
GWの最中、川口の道の駅付近でもクマの目撃情報があり、すわ一大事と市の担当者が対応に当たったが、被害なく済んでほっとしたところだ。

市民の皆さんには、生ごみを外に放置しないなど対策の徹底をお願いしたい。
「寄せ付けない」ことが第一。そして、クマやイノシシを見かけても絶対に近づかないでほしい。安全な場所から、市役所または最寄りの警察署へ連絡していただきたい。

ということで、今回は、市が取り組む今年度の鳥獣被害対策を紹介しよう。

 

1 防除〜 “人間界”と“動物界”の境界を守らせる

野生動物を寄せ付けない対策として、電気柵の「貸出し」と研修会を地道に実施してきた。

その結果、昨年度の実証的取り組みで、電気柵の設置がサルやイノシシに有効であることが確認できた。必ずしも「万里の長城」にように切れ目ない防護線をつくらなくとも、電気柵が点在することで、サルは警戒してその地域を避けることも判明した。そこで順次、電気柵を増やし、害獣の行動範囲をさらに制限する作戦を展開する。

電気柵の設置講習会(栃尾地域)

今年度は新たに、電気柵の「購入」に対する補助を行う。

対象者は、農家組合や町内会などの団体や個人で、電気柵の購入費の1/2の額を補助する(上限:団体20万円、個人5万円)。設置を検討している方は、ぜひともご活用いただきたい。

 

 

 

 

 

環境整備〜生態系を守りながら

野生動物が人里に頻繁に現れる現象は、里山の消滅が原因との指摘がある。
緩衝帯としての里山がなくなり、動物とヒトの境界があいまいになってきた。この境界を強制的に守らせるのが1の電気柵であるが、自然界のリーダーたる人類の使命は、動物たちと敵対し、やっつけてしまうことではない。生態系を壊さず、共生の工夫をしてゆくことだ。

今年度、人と野生動物の生活圏を棲み分ける「鳥獣緩衝帯」の整備に対する補助を新設した。
鳥獣緩衝帯とは、ヤブや雑木林・耕作放棄地等をきれいにした見晴らしの良いエリアのことだ。野生動物にとっては、けものみちや隠れ場所が無くなり、人里に近づきにくくなる。自然の摂理にかなった平和的な線引きができるだろう。

本来は「里山の再生」を目指したいところだが、人口減少と高齢化を考えると無理はできない。
町内会や農家組合等の団体に上限15万円まで補助する。この機会に、ぜひ整備を検討いただきたい。

 

クマよけ鈴 (子ども用)で鉢合わせを防ぐ
啓発リーフレット「鳥獣けものみち」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

野生動物にとって、農作物は危険を冒してでも手に入れたい宝物のような存在だ。山のドングリが不作になれば、クマたちは危険を冒して集落に近づいてくる。収穫されずに放置されたカキなどの果樹は、動物にとって恰好のごちそうで、クマやイノシシ、サルを人里に引き寄せる原因となっている。

不要果樹の伐採(栃尾地域)

 

市では不要の果樹伐採に対して補助制度を設け、対策を進めてきた。今年度も継続しているので、こちらも利用してほしい。「ここは、ヒトが管理している“人間の領域”だ」というメッセージがより明確に伝わってゆくだろう。

 

 

 

3 捕獲〜頼りになる鳥獣被害対策実施隊

鳥獣被害を防ぐには、「駆除するしかない」と考える人も多いかと思う。
しかし、闇雲に捕獲(駆除)することは生態系のバランスを壊す。まず、野生動物を寄せ付けない対策をしっかりと行い、そのうえで、考慮しながら増えすぎた有害鳥獣の捕獲(駆除)をしてゆくというのが基本的な考え方だ。

今年度は、栃尾地域でのサルの調査と大型檻導入で捕獲を強化する。また引き続き、小動物(ハクビシンなど)捕獲のための箱わなの購入費補助(上限3万6,000円)、狩猟免許取得の補助(わな猟免許上限:1万円・銃猟免許所上限:5万4,000円)を行いながら、獣害対策を強化していく。

 

わなによる捕獲(イノシシ)
鳥獣被害対策実施隊

 

 

 

 

 

 

鳥獣被害対策実施隊

対策の中でも、大型獣の捕獲は危険度が高く、集落や個人で実施するのは困難だ。そこで強い味方となるのが、長岡市鳥獣被害対策実施隊の皆さんだ。

実施隊は市内猟友会員などで構成され、181名の隊員が精力的に活動している。イノシシなどの大型獣やカラスなどの鳥類の有害捕獲、出没時のパトロールを行っており、令和3年度においては、イノシシ118頭、シカ32頭を捕獲した。実施隊の皆さんはオレンジ蛍光色のベストを着て活動しているので、山などで見かけてもすぐに分かる。
夏から秋にかけてはわなによる捕獲、冬は積雪でイノシシやシカの足跡が残ることを利用して、雪山での一斉捕獲を実施している。地域の安全安心を守るために活動する実施隊の皆さんに、心から感謝したい。

現在、市では捕獲の担い手を募集している。意欲、興味のある方はぜひ、お問い合わせ(長岡市鳥獣被害対策課 TEL:0258-39-2348)いただけたらと思う。

 

いま、鳥獣被害対策の三本柱「防除・環境整備・捕獲」を、地域ぐるみでバランス良く進めていくことが重要だと考えている。

誰もが安心して暮らしていける環境づくりのため、常に実証的に取り組み、進化し続ける対策を続けてゆく。

 

 


   関  連  記  事:  鳥獣被害ブロック! イノ.シカ.クマ.サル


 タイトル画像:
 
寺泊地域の海岸に出没したイノシシ(捕獲済み、2020年4月)