全国的に鳥獣被害が拡大している。
長岡市でも、クマ・イノシシ・サル・シカ・ハクビシンなど 害獣被害への 対策を強化しているところだ。被害 を未然に防止しようと現場は着々と動いている。

 

今年の秋は──

キノコ狩りなどで山に入る人が多い秋は、クマ(ツキノワグマ)が冬眠のため食料を求めて人里へ足を延ばしてくる。今秋の山のようすはどうだろうか? 新潟県の調査によれば、

  • 奥山に分布しているブナ・ミズナラは、凶作~不作
  • 人里に近い地域に分布しているコナラ・クリ・オニグルミは不作~並作

となっていて、ツキノワグマのエサ不足が予測されている。里山だけでなく、柿など果樹がある人里にも出没する可能性が高い。注意が必要だ。

 

 


< クマ対策 >
不要果樹の伐採〜人面地区(栃尾地域)

今年度、市内で、約90件のクマの目撃情報が寄せられている。(クマ出没マップ参照)

クマの被害を防ぐため、栃尾地域を中心に、警察と連携したパトロールとチラシ配布等による注意喚起をしている。出没が頻発した場合は、目撃報告の有無にかかわらず、朝夕2回、広報車の巡回による警戒を強化しており、この音声による追い払い効果で目撃(出没)件数が減少した。

通学時の子どもたちには大きな音の出る鈴を持たせるなど、安全確保の強化に取り組んでいる。

 

昨年、栃尾地区で集落近くのクリの木にクマが現れ、人身被害が発生した。

山に食べるものが少ないと、クリやカキを食べるために人里近くまで下りてくる。そこで今年度は、町内会等で不要果樹を伐採する際の費用の補助制度を新設した。すでに、人面ひとづら集落(栃尾地域)など7地区で住民たちによる果樹の伐採が行われている。今後も、20集落で伐採を行う予定だ。




<イノシシ・サル対策>

サル用電気柵の設置〜大野原区(栃尾地域)


 
イノシシ・サルに対しては、電気柵の設置に力を入れている。

昨年度イノシシによる水田や畑などへの被害が多発した12地域に、新たに電気柵の貸し出しを行った。ほか、飯塚・岩田地区(越路地域)に3段・全長2.8kmの電気柵を設置済みだ。

また、サルの被害が多発している栃尾地域では、従来の貸し出しに加え、大野原地区に大規模な電気柵を設置し終えている(8段・全長2.2㎞、7月に完了)。

イノシシ・サルいずれも、設置場所で農作物等への被害は確認されなかった。このことから、電気柵は有効な防除手段だと考えられる。

 


<全般的な対策〜捕獲わな>
クマわな設置(山古志地域 鳥獣被害対策実施隊


クマ・イノシシ・サルの捕獲については、昨年よりも早期から「捕獲わな」を仕掛け、被害が食い止めている。捕獲にあたっては、生態保護に配慮し、被害をもたらす有害鳥獣のみ・・・・・・を捕獲している。

 

さらに広域な視点が必須


ここで法律の条文から目的理念を
引用しておこう。
『鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律』の第一条には──

(略)鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化を図り、もって生物の多様性の確保(生態系の保護を含む)、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資することを目的とする。

とあり、野生動物の保護と生物の多様性を守っていくことが大切な観点となっている。人間との関係だけでなく、自然界全体のバランスを維持する使命を人類は負っているのだ。

 

 ◎ 個体数の適切な削減

生態系のバランスをとるためには、まず、人間との境界をはっきり動物たちに知らしめる必要がある。こちらの資料からも解るように、近年の個体数の激増は──人の生活圏を侵害する数にまで増えて──看過できない状況だ。
現状では、まず個体数を減らすことが共存への道であり、捕獲数を増やすことを基本方針の1つとしている。

だが、動物たちは広大な山間地域に生息し、それぞれ大きく移動する。自治体単独で駆除や追い払いをしても焼け石に水だ。全国的・全県的な広域対策が必要な課題であることを訴えていきたいと思う。

 

 ◎ 連携が必須

自然と人間の生活の境界が、どんどんあいまいになっていることへの対策も必須だ。
人口減少・高齢化によって、里山に管理の手が入らなくなってきた。耕作放棄地がやぶになり、野生鳥獣が身を隠しやすくなって人家近くまでやってくる。そして被害が発生する。だが、個々の集落や農家組合だけでは対策が難しい状況が生まれている。

 

電気柵設置研修(長岡地域)に町内会・農家組合の代表ら約30名が出席

そこで、長岡では地域ぐるみの連携体制で対策を進めている。

各地域で対策協議会が立ち上がり、研修会や免許取得講習会の開催など、共同で獣害対策に取り組んでいる。取り組み地域からは、「研修会などの情報が素早く共有できる」、「広い範囲で効率的に対策を講じることが可能」など、ポジティブな声が寄せられている。

今後、市はこうした地域の活動を支援し、研修会や、小型動物用(ハクビシンなど)のわなの購入狩猟免許取得の補助を行い、地域ぐるみの鳥獣被害対策を強化していく。

 

なお、鳥獣被害対策の取り組みは広報テレビ番組「ナルホド!ながおか」でも紹介しているので、ぜひご覧いただけたらと思う。(こちらからご覧ください




 

<参考データ>

■長岡市内主なの鳥獣の出没・捕獲数  (単位:頭)

  H28年度 H29年度 H30年度 R1年度 R2年度 R3年度
9/14現在

クマ出没

104  142  68  179  224  93 

イノシシ 出没

6  22  34  86  114  52 

サル捕獲

16  16  10  27  58  39 

 

 

長岡市鳥獣被害対策実施隊

・長岡市内の猟友会の加入者で構成。約160名の隊員が活動。
・長岡市の要請を受けて出動し、鳥獣の捕獲を行う。
・冬期のイノシシの一斉捕獲(巻き狩り)なども行う。

※問い合わせは鳥獣被害対策課へ(TEL0258-39-2348)

 

■獣害対策不要果樹伐採事業補助金(果樹伐採の補助)

○概 要
放置された果樹は野生獣を誘引する要因となるため、人身被害及び農作物被害を防止することを目的に、町内会等が行う果樹の伐採費用を補助する。
○補助対象
・補助対象者:農業者団体、町内会等の団体
・対象の樹木:柿、栗等の野生獣を誘引する果樹
○交付額 上限額50,000円まで
○対象経費 チェーンソー等の賃料及び燃料費、賃金、謝礼、処分費、委託料等

 

■鳥獣被害対策研修会

○概 要
集落等の要望により、地域の実情(出没する鳥獣、地域住民のモチベーション、対策の進み具合等)に合わせた研修会を開催するもの。獣害対策の専門家を講師として招き、集落センター等を会場として開催することが多い。

○研修会メニュ―
・鳥獣被害対策勉強会…鳥獣の生態及び対策手法の学習
・集落環境診断(予備診断・本診断)…集落内踏査と、課題と解決策の検討
・合意形成ワークショップ…実施する対策の集落内での合意形成
・電気柵設置指導…電気柵設置方法の現地研修
・電気柵機能診断…設置済み電気柵の機能チェック

○対象者 農業者団体、町内会、地域の協議会など
○対象鳥獣 イノシシ、サル、クマ等
○経 費 講師謝金は市が負担する。

 

■獣害対策用資材貸付事業(電気柵の貸付け)※受付終了

○概 要 お試し用の電気柵の貸し付けを行う。
○補助対象 農業者団体、町内会等の団体 ※1集落につき1回まで
○貸付ける電気柵の仕様 ※いずれもソーラー式
・イノシシ用:300m3段張り 水田2~3枚ほど
・サル用:70m8段張り 畑1か所  
○経 費 設置に必要な道具と貸付け後の管理等に伴う経費は受益者が負担。
○注意点
・設置か所の集落内での合意が必要。設置と管理方法は、市の研修会を受講。

 

■鳥獣被害対策捕獲わな導入支援事業(小型動物用)

○概 要
ハクビシンなど小型動物による農作物被害(家庭菜園を含む)が増加しており、生きがい農業を守るため、わなの導入経費の一部を補助する。
○補助対象
・補助対象者:農業者団体、町内会等の団体
・対象のわな:小型動物の捕獲を目的とした箱わな ※イノシシ用等は対象外
○交付額 わな1基あたりの上限額18,000円かつ、事業費の上限額36,000円まで
○対象経費 わなの導入経費及びその消費税 ※送料等は対象外
○その他
・鳥獣捕獲は許可が必要。わな使用者は市環境政策課から許可を得る。
・わな設置には免許が必要だが、自作農地での小型箱わなは不要。





   関  連  記  事: イノシシ、シカ、クマ、サル

 タイトル画像:
サル用電気柵設置研修(7月栃尾地域)に
電気柵の設置を検討する方々約30名が出席