今年で戦後80年ということで、国内の各地各所でさまざまな動きがあった、 例年よりもマスコミは積極的な報道姿勢で臨んでいるように感じた。 とはいえ、戦争と平和に関する数多くの番組やコメントに接した感想としては、どこまで本気なのか、真実なのかは分からない、というのが率直なところだ。

長岡市は、長岡空襲から80回目の夏を迎えた。

1945年7月20日の模擬原子爆弾投下と、8月1日の米軍爆撃機B29による焼夷弾攻撃で犠牲になった方々1,488人を「長岡空襲戦災殉難者」として名簿に登載してきた。今年、御遺族からの申し出により、平成30年以来、7年ぶりに1名を名簿に追加し、殉難者は1,489人となった。

今ある平和な日常は、多くの尊い犠牲の上に成り立っている。このことを語り継いでいかなければならない。県内で唯一の大規模戦災都市である長岡は、「平和がいかに尊いものであるか」を次の世代に伝えていく責務がある。

今年の平和への取り組みを振り返ってみたい。

■8月1日 慰霊と平和への願いを込めた行事

①長岡市平和祈念式

昭和60年に始まった「非核平和都市宣言市民の集い」が前身。恒久平和の日条例が制定された平成27年からは「平和祈念式典」に名前を変え、今年で11回目となる。

遺族や空襲体験者など約850人の参加があり、亡くなられた方々への黙とうや献花、長岡空襲の講話、非核平和都市宣言の朗読などのほか、小学生が折った折り鶴を中学生が広島へ届ける「折り鶴の依託」を行った。

市では近年、長岡空襲で大きな被害を受けた地域だけでなく、それ以外の地域にも足を運んで、当時を知る方の話を聞く取り組みを行ってきた。今回は初めて支所地域の方(与板地域)から講話いただき、さまざまな角度から長岡空襲の史実を伝えていく第一歩になったと感じている

②鎮魂たむけの花

長岡空襲で亡くなった方々を追悼する市民献花で、今年で31回目を迎えた。今年はアオーレ長岡に会場を変更し、より多くの皆さんから献花していただいた。

「市内中学生平和作品募集」入賞作品のほか、長岡市出身の俳優・星野知子さんをお招きし、長岡空襲体験談の朗読と平和への想いを語っていただいた。

④終戦80年 大石芳野「平和祈念」写真展in長岡

半世紀にわたり、アウシュビッツカンボジア、広島などで戦禍に遭った人を撮影してきた写真家・大石芳野(おおいし よしの)さんの写真展を7月26日(土)から8月1日(金)まで開催した。

長岡市出身の作家でスポーツライターでもある小林信也(こばやし のぶや)さんが中心となって企画し、長岡空襲体験者の“今”を収めた写真も展示された。各地で撮影した写真とともに取材をした人のエピソードを紹介しており、期間中は県外からも多くの来場者が訪れ、作品に見入っていた。

これらの他にも、戦災殉難者慰霊祭(平潟神社)や墓前法要(昌福寺)、平和祈願祭(平和の森公園)、柿川灯籠流し(柿川 一之橋~追廻橋周辺)、慰霊の花火「白菊」の打ち上げなど、さまざまな行事が行われた。

長岡市民にとって8月1日は決して忘れることができない、忘れてはいけない特別な日だ。悲惨な経験をした長岡だからこそ、長岡空襲の記憶を風化させることなく、平和への願いとともに未来へ継承していく。

■戦後80年 人気ゲームを通じて長岡空襲を学ぶ

長岡空襲の史実を伝え平和を考えるための新たなツールとして、人気ゲーム マインクラフトで長岡の歴史を学ぶワークショップを8月9日(土)、10日(日)にミライエ長岡で開催した。教育版マインクラフトを活用した平和学習は全国で4番目、県内では初開催で、小学4~6年生の親子19組が参加した。

語り部から空襲の時の話を聞いたり、戦時中の写真や動画を見たりしながら、空襲の史実や当時を知る人の思いを学習。その後、グループで協力してゲーム内に戦争当時の長岡のまちを再現した。

参加した子どもたちからは、「マインクラフトで戦争や平和のことを楽しみながら学べた。長岡が争いをしない平和なまちになってほしい」との感想もあり、今後の平和学習の可能性に期待が持てるものとなった。

■来年5月、長岡戦災資料館リニューアルオープン!

現在、長岡市は長岡空襲の史実を伝承するため、戦災資料館移転・整備を進めている。旧互尊文庫を耐震補強し、バリアフリー化、老朽化対策等の工事を進め、遺影展示室(R7.8.1現在で379人分の遺影を所蔵)、資料展示室、映像資料視聴室、平和学習室、図書閲覧室など、面積は従来の3倍となる。

リニューアルオープンは来年5月を予定している。この新しい戦災資料館を、来館者が空襲の史実を「自分ごと」として捉える場とし、恒久平和の思いを発信する拠点として、市民の皆さんと共に育てていく。

長岡空襲から80年を迎え、県内唯一の大規模戦災都市である長岡市は、悲惨な体験を次の世代へとしっかりと引き継いでいく。戦災から復興し、今日まで至る80年を総括し、改めて「米百俵の精神」と「市民協働」の原点に立ち返り、新しい価値観に基づく未来への展望を市民総意で創っていきたい。

   関  連  記  事 :  この夏も“平和を願って” 慰霊・復興・平和への祈り ホノルル長岡姉妹都市 10周年 歴史文書アーカイブ〜未来のために

 

 タイトル画像 : 

令和7年8月1日 第42回柿川灯籠流し(柿川一之橋・追廻橋下流護岸)