わが国の農業は、高齢化と後継者の減少で労働力不足が深刻な問題となってきた。熟練を要する作業も多いため、 技術の継承が 必須であるとともに 、省力化も求められるなど課題は多い。
長岡市では、市内の農業経営体の数は約3,800 (2020年) と、この5年でおよそ1,200も減少している。当然、専業的に農業に従事する「基幹的農業従事者」も減少し、約3,500人 となっている (2020年)。そのうち65歳以上の高齢者は約80%で、県平均 (75%) や全国平均 (68%) を上回る。農業者減少と高齢化への対応は待ったなしだ。
こうした課題の解決手段の1つとして注目されているのが、ロボットやAI、IoTなどの先端技術を活用した「スマート農業(スマートアグリ)」である。
市でも、平成30 (2018) 年度からスマートアグリの検証や社会実装に取り組み、ドローンや自動操舵トラクターを活用した実証実験の成果と検討し、課題を洗い出してきた。今年度は、これまでの成果を踏まえ、普及に向けた取り組みを加速化させる段階に入った。
■スマートアグリ着々と
先月25日、「あぐらって長岡」内にスマートアグリを研修・体験できる拠点をオープンした。
ここでは、ドローン(農業用・空撮用)はじめ、自動操舵トラクターなど機器の操作体験ができる。ここで体験できる機器は、今までの実証実験で「これは使える」と実証されているものだ。それらを気軽に体験してもらうことで、導入につなげることを目指している。
また、この施設では、子どもや学生も操作体験できるのがウリで、親子や学校を対象にした体験型の講座を開催している。こうした、「誰でも」「手軽に」スマートアグリを学び、体験できる場の開設は、なんと全国初の取り組みだ。先端技術の体験をきっかけに、未来を担う子どもたちにも農業に触れてもらいたい。そして、農業に興味を持ち、職業選択の1つに加えてもらえたらと思う。
オープンから1か月が経過し、大勢の親子連れや児童生徒、大学生のほか、ものづくり企業の方々からも体験していただいている。幅広い世代・職種の方々がさまざまな目的で体験することは、あらゆる可能性の間口が広がるだろう。この中でのイノベーション創出も期待しよう。
冬には、長岡の地域資源であり、クリーンエネルギーでもあるガスを使い、空調や潅水を自動制御する「次世代園芸施設」の開設を予定している。「高品質栽培」と「CO2削減/排水削減」を両立させる新しい農業がスタートする。
■広域「水」モニタリングシステムの構築へ
市では、昨年度から水管理センサーの実証実験も進めてきた。
実験に協力いただいた方からの評価も高く、水位の管理センサーが有効と認められたことから、今年度は、水田や用水路に水位センサー約650台の設置準備を進めている。併せて、市内11地域(全支所地域含む)に気象情報を計測できるセンサーも設置し、こちらはプレ稼働が始まっている。
センサーから得られたデータは、リアルタイムでWEB上に公開し、データベース化するシステムの構築を進める。これにより、農業者/市/JA/関係団体の間でのデータ共有が可能となる。
期待できる効果は──
農業者:作業の省力化が実現できる
長岡市:渇水や豪雨災害時に迅速に対応できる
JA :営農指導に活用して米など作物の品質向上に寄与できる
農業関係者の連携を図り、データ活用を農業の生産性向上と基盤強化に役立てていこう。センサーとシステムの本稼働は来年度の予定だ。これらの取り組みは、国が成長戦略に位置づける「デジタル田園都市国家構想推進交付金事業」に選定されている。農業分野でもデジタル実装を加速化し、あらゆる分野でのデジタル化・DX推進へと波及させていきたい。
これからも長岡市は、長岡の農業の実情や課題に対応した「長岡版」スマートアグリを推進し、女性や若い世代を含む新規就農者の確保・担い手の育成、生産性及び品質の向上を図っていく。
農業には自然と直接つながる大きな魅力がある。人間にとって最も大切で必要とされる仕事でもある。重労働や時間的制約を受けるといった点を解決すれば未来は明るい。
「持続可能な農業」を実現していこう。
関 連 記 事 : 資源循環を進めよう!
タイトル画像: ドローンの操作体験