能登半島地震から1か月。上下水道の復旧支援のため、 長岡市からも市職員や民間事業者の派遣し、物資の提供を行っている。少しでも早い復興を 願い、支援を続けていく(前回のブログ記事)。
改めて痛感するのは、ライフラインの重要性だ。道路の寸断によって復旧作業が遅れ、断水、停電が続けば、ただちに命にかかわってくる。被災地ではいまだに広範囲で断水が続き、飲食用のみならず、洗濯や風呂、トイレなどに必要な水が十分にない地域があるという。20年を経てあらためて中越大震災のときの恐怖や不安の日々が思い起こされる。
今回は、人間の生命活動を維持するために不可欠なライフラインの一つである、「命の水」= 水道 を守る長岡市の取り組みを紹介する。
■ 次の100年のために、手を携えて
今年は長岡市の水道管工事着手から100年の節目の年である。下水道とともに全国的にも早い整備だった。そして現在、次の100年を見据えて、水道事業の新たな展開とイノベーションに取組んでいる。
1月23日、長岡管工事業協同組合と「安全安心で持続可能な水道」に向けた連携協定を締結した。
近年、激甚化・頻発化する災害や大規模事故や、水道管路の老朽化への対応が急務となっている。一方で、工事業界においては、ベテラン職人の退職や人手不足の中で、工事能力の維持確保と技術力向上が大きな課題となっている。そうした自然発生的な問題や、マンパワーの不足等の課題を解決するため、地域に精通した地元業者で構成される同組合と市の連携を強化するのが協定のねらいである。
【連携事項】
① 災害及び大規模事故の発生時における
協力体制の確立
② 平常時における維持管理業務の連携強化
③ 水道工事従事者の確保・育成
④ その他水道事業の発展に資すること
■ “ A I 漏水調査” で経費6割減
地下の見えないところで起きている漏水は、大きなリスク(漏水に起因する道路の陥没などの二次災害 etc.)につながっている。同時に、水資源のむだ使いであり、収益性の低下を招くことになる。
いかに漏水を止めるか?
この課題解決に向け、長岡市水道局が昨年から導入したのが、AIを活用した漏水調査だ。
この調査では、地中3mまで浸透する電磁波を人工衛星から照射し、その反射波の画像をAIで解析して漏水可能性エリアを抽出する(イラストのとおり)。
さらに、この情報を水道管の埋設情報と照らし合わせて漏水管路を絞り込み、現地で実地調査を行うという手順だ。
今年度は寺泊、与板、三島、和島、小国、越路地域、長岡地域の川西地区の一部の水道管583.1㎞を対象に実施し、衛星による調査で247カ所(87.1㎞)に漏水可能性エリアが絞り込まれた。現在、そのエリアの管路を漏水探知機により漏水箇所を特定する作業を行っている。
下の地図が今年度の中間調査結果(上の赤い円:寺泊,和島,与板,三島,長岡川西地区の一部/中:越路/ 下:小国)。
市内の水道管の総延長は約2,400km。これまでは漏水探知機(漏水の音を探りながら漏水箇所を探す)だけを頼りに、徒歩によるローラー作戦で調査していた。こうした従来の調査には大変な時間とコストを要していたが、AI調査の導入で経費は6割も削減された。天候や昼夜に左右されずに、1回で広範囲を調査できるので、給水区域全体の調査サイクルが10年から3年に短縮されることになった。こまめな調査による漏水量の削減が、独立採算制の水道事業経営に与えるメリットは大きなものがある。
AI漏水調査が、大幅な経費削減と調査の効率化を実現することが実証された。これからもAIなどのデジタル技術を活用した水道イノベーションを続けていく。
日本では蛇口をひねれば、きれいな水が出てくる。それが決して当たり前ではないことを、今回の震災はあらためて教えてくれた。安易に民営化などの道を選択せず、市水道局と地元事業者が力を合わせて、長岡の水道 =「命の水」を守っていくことが大切だと考えている。
関 連 記 事 : 能登半島地震 感染症から市民を守る「長岡の下水道」
タイトル画像 : ライトアップされる水道タンク。昭和2年建造。信濃川に隣接する。今は使われてい
ないが、長岡のシンボルとして市民に親しまれてきた。この周辺は水道公園として整備され、東屋やベンチがあり、映画のロケ地やプロモーションビデオの撮影地にもなっている。
水道タンクは平成10年9月に、ポンプ室棟・予備発電機室棟・監視室棟は平成25年12月に国の登録有形文化財に登録された。