２０２４年は、さまざまな節目の年だった。
７.１３水害と中越大震災から２０年。長岡市下水道事業１００周年。日本酒で乾杯条例１０周年。長岡造形大学は創立３０周年・公立化１０周年。多くの分野で周年事業が行われた。
そんな２０２４年という年に、起業・創業を支援する二つの機関もまた節目を迎えたので、ご紹介しよう。
■設立20周年「ながおか新産業創造センターNBIC」
中越大震災の翌月、平成１６年１１月１日に、長岡地域初のインキュベーション施設として「ながおか新産業創造センター NBIC」が設立された。
NBICは長岡技術科学大学に隣接し、起業して間もない事業者に居室を貸し出すとともに、研究機関との橋渡しや、ビジネスイベントへの出展支援をおこなっている。
この２０年間で、長岡技大発ベンチャーなど２６事業者が卒業。その多くが市内で事業を展開し、うち３社は市の産業団地に進出している。
卒業企業の状況
| 卒業企業・団体 | 市内 | 市外 | ||||||
| 合計 | 産業団地 | NARIC※ | その他 | 合計 | 県内 | 県外 | ||
| 20 | 3 | 2 | 15 | 6 | 4 | 2 | ||
現在、パワエレ・バイオ分野などの企業や研究室が入居していて、大学との共同研究を進める拠点となっている。
入居者一覧（2024年11月時点）
| 入居企業 | 事業概要 | 長岡技術科学大学との関係等 |
|---|---|---|
| 長岡技術科学大学 ・三好研究室（制御） ・横倉研究室（パワエレ） ・日下研究室（パワエレ） | 研究 | |
| （公財）にいがた産業創造機構ナノテク研究センター | 企業との共同研究、精密機器の利用貸出 | 共同研究 |
| 長岡パワーエレクトロニクス㈱ | 電力変換器を開発 | 長岡技術科学大学発ベンチャー |
| 長岡モーターディベロップメント㈱ | モーターの受託開発・評価 | 長岡技術科学大学発ベンチャー |
| Phoenix Robots | RoboMaster出場ロボットの開発、世界大会出場 | 学生団体 |
| （NPO）国際レスキューシステム研究機構 | World Robot Summitの評価解析 | 技大教員 |
| ㈱ナノアロイテクノロジー | 合金ナノ粒子合成法の研究開発 | 共同研究 |
| ㈱プラントフォーム | アクアポニックス研究開発及びプラント参入支援 | 共同研究 |
| ㈱FieldWorks | 農地対象草刈ロボットの企画・設計・開発・販売 | 長岡技術科学大学発ベンチャー |
| ㈱AZNICS | ディジタルゲートドライバＩＣ技術の社会実装 | 共同研究 |
■「新潟県起業支援センター CLIP長岡」は１０周年
長岡市が推進する、長岡版イノベーション。その一環として、NaDeC構想に基づく「ファーストペンギンプログラム」がある。ファーストペンギンとは、捕食者が待ち受けている恐れのある海中へ餌のために、いの一番に飛び込んでゆくペンギンのこと。リスクを恐れず果敢に挑戦し、社会のために新たな価値を生み出そうとする起業家の比喩になっている。このプログラムのもと、さまざまな支援が展開中だ。
その中でも、業種や世代を問わない個別相談や、学生起業家育成プログラムなどの実施を「新潟県起業支援センター CLIP長岡」に委託している。このCLIP長岡が発足から１０年の節目を迎え、個別相談累計3,000件、起業実績300件を達成した。
相談窓口はミライエ長岡のNaDeC BASEにある。ミライエのオープンをきっかけとして、起業個別相談は前年比で３０％増となっており、１０月から相談員を２名増員して対応している。今後は、女性起業者向けのセミナーなども積極的に実施していくつもりだ。
| 平成26 7月~ | 平成27 | 平成28 | 平成29 | 平成30 | 令和1 | 令和2 | 令和3 | 令和4 | 令和5 | 令和6 ～10月 | 合計 | |||
| 相談件数 | 169 | 299 | 326 | 331 | 373 | 255 | 277 | 285 | 266 | 383 | 159 | 3,023 | ||
| 企業実現 | 8 | 30 | 38 | 36 | 30 | 33 | 40 | 27 | 25 | 23 | 17 | 307 | ||
個別相談は初回から３回まで無料。デザイン思考を活用した育成プログラム「リーンローンチパッド」や起業スクールも実施し、新たな事業創出の実現につなげている。
これまでの実績をみると、生活関連サービス業に加え、技大や高専、造形大生などの学生起業家による「専門技術サービス分野」での起業が増えてきている。
大河信濃川の中流域に位置する長岡は、古来より交通の要衝で地の利がある。これからは、日本海時代だと考える人々もいるだろう。なにより、米百俵の精神が息づいていることがアピールポイントだ。
今後も「人材育成」と「産業振興」の拠点であるミライエ長岡を中心に、若者の起業・創業をバックアップしていく。
関 連 記 事 ： 地域のチカラで進める DX 《引力》のあるまちづくり ミライエ発、長岡版イノベーション
タイトル画像 ：
ながおか新産業創造センター(NBIC) 開設20周年記念式典 ミライエ長岡にて