3月11日(土)、35年続いてきた山古志地域の火まつりの幕がおろされた。古志の火まつりファイナルをメディアなとでご覧になった方も多いと思う。
これまでまつりを支え続けていただいた実行委員会の皆さん、地域住民の皆さんに深く感謝申し上げる。そして、歴史あるイベントの休止を断腸の想いで決断され、次なるステージへ “スタート”を切ったことに心から敬意を表したい。

長岡でも中山間地域の人口減少が加速している。

山古志地域の人口は、震災以降激減し、現在は800人を切った。高齢化も進行している。地域住民から「火まつりに使うカヤ集めが負担になっている」「継続は無理だ」という声が挙がっていた。本当に残念なことだが、イベントは継続困難と判断し休止が決まった。

今回は、中山間地域の先行モデルである山古志地域からの報告である。

 

 

 

■ 火まつりの想いをつなぐ
第1回古志の火まつり(種苧原地区)

 

『古志の火まつり』は、冬の山古志を盛り上げようと1988(昭和63)年に種苧原地区で初開催され、以降、一人一束カヤを持ち寄るなど「地域総参加」で行われてきた。

2004年に発生した中越大震災後には長岡雪しか祭り会場に移して継続。2008年には再び山古志地域での開催を実現し、災害に負けない心意気、復興を遂げた山古志の姿を広くアピールし続けてきた。

復興支援に携わった東洋大学の学生ボランティアイのみなさんがイベント運営に協力してくれたり、岩手県大槌町の方々による伝統芸能「虎舞とらまい」の披露や、山古志地域と大槌町の新成人が一緒に「さいの神」点火を行うなど、まつりを通して広がった交流も数多い。今後も、まつりが生んだ交流は継続されるだろう。

 

岩手県の無形民俗文化財・大槌町の伝統芸能「虎舞」※2014年の火まつりで

 

すでに、新たなイベントとして、日本農業遺産に認定されている棚田や錦鯉を育てる棚池をライトアップする計画が地域内で進められていて、今秋にも実現する予定だ。
山古志の「巨大さいの神」はこれで見納めとなったが、地域の宝を活用した魅力発信、交流人口拡大の取り組みが創意工夫で継続して実施されることを期待したい。

 

■デジタルでつながる

 

人口減少という否定できない現実にあって──、山古志住民会議の皆さんによる「デジタル村民※」が参加する地域づくり「仮想山古志プロジェクト」が間もなく1年半を迎える。

山古志の電子住民票付きデジタルアートを購入した方のこと。この試みは、以前のブログでも紹介したように国内外から高い注目を集めている。


現在、デジタル村民は1,000人を超え「リアル住民」を上回った。コミュニティチャット内では山古志の地域住民が情報発信するだけでなく、デジタル村民とリアル住民、さらにはデジタル村民同士の交流が生まれている。

交流はもちろん、ウェブ上でのやりとりにとどまらない。実際に山古志を訪れ、直接リアル交流するデジタル村民も増えている。この冬も多くのデジタル村民が「帰省・・」を果たし、地域リアル住民と餅つき・かまくらづくりなどを楽しみ、雪かきボランティアに参加してくれた方もいた。

デジタル村民とリアル住民の交流。今年2月に一緒に餅つきをしたときの1シーン

 

帰省者・・・」はのべ200人にのぼり、山古志の豊かな四季に触れて帰省リピーターとなっている方もみられた。「リアル住民とのコミュニティができているように感じ、初めて来た気がしない。観光とは違う感覚で楽しめた」と好評だ。私たちは血縁を選ぶことはできない、しかし仮想世界を通じて、まるで親兄弟親戚であるかのような繋がりも作れるのではないか。

古志の火まつりでは、事前にドローンで撮影したさいの神の映像をデジタル住民が「メタバース山古志上に再現するとともに、さいの神点火式の様子をメタバース上でライブ配信した。デジタル村民の協力によって、現地に来られない方もまつりに参加できる新しい取り組みが実現した。

※メタバース山古志:仮想空間上に山古志地域を再現し、アバターを通じて交流する場。デジタル村民に限らず誰でも参加可能(延べ2,000人が訪問)。昨年2月のデジタル村民とリアル住民によるデジタル総選挙で決定したプロジェクトの一つ。翌月の3月にスタートし、デジタとル村民が運営。

 

今後もデジタル村民が増え続け、デジタルとリアルのつながりが一層深まり、協働が進むことで、これまでにない発想で地域づくりが展開していくことを期待しよう。

メタバース山古志上の さいの神 (棚田やおらたる,支所なども再現されていて、アバターでチャット交流する)

 

 

■新たな出会い・交流は移住定住にも

 

市は昨年11月にお試し移住体験を始めた。
山古志地域内の公営住宅(復興住宅)の空き部屋を利活用した企画で、早速今年1月には、デジタル村民でもある神奈川県在住の3人家族が山古志暮らしを体験。ネット上の情報ではわからないリアルな移住生活を体験していただけたことだろう。

山古志移住を体験したご家族

このご家族は、将来的に都会と地方の二拠点居住を検討していて、デジタルアートを通じてつながりが生まれた山古志を訪れてみたかったという。「VRでは体験できない雪の冷たさや寒さを実感できた」「今後も山古志とつながりを持ち続けたい」と語ってくれた。新たな取り組みによって生まれた山古志との縁や出会い、交流を移住定住につなげていきたい。



人口減少・少子高齢化が進み続ける中で、地域の交流人口や関係人口の増加は不可欠である。

本当に都会の生活がベストなのだろうか?と問いかけながら、他の中山間地域においても、新たな価値や地域づくりに取り組んでいきたい。

 

 

 

 



   関  連  記  事 :
 仮想山古志プロジェクト コロナ禍と錦鯉


 タイトル画像:
 

古志の火まつりファイナル さいの神点火式

会場に訪れた約3,000人の方が最後のさいの神点火を見届けた。