長岡市では、デジタル技術の導入による変革(=DX)の視点から、さまざまな分野で事務作業や手続きの効率化を推進している。
目指すは 「だれ にでもやさしいデジタル技術が浸透した社会」の実現である。
今回は、長岡の行政窓口・行政サービスにおける「行政DX」の最新トピックを紹介する。
■書かない窓口!
長岡市では、アオーレ長岡オープンを機に総合窓口を開設し、「窓口ワンストップサービス」を提供してきた。平成24(2012)年のことである。
現在は、さらなる利便性(今風に云うとタイパ=時間対効果?)の向上を実現するため、手続きや処理システムをデジタル化を不断に進めている。
今月15日(木)から「書かない窓口」がスタートした。
対象は、転出・転入・転居や国民健康保険・国民年金の手続など計36種の手続きで、アオーレ長岡総合窓口と和島・寺泊・与板支所の窓口で実施している。
「書かない窓口」では、マイナンバーカード(運転免許証等も可)で読み取った本人情報(氏名・生年月日・住所など)や聞き取りした内容を、受付職員がシステムに入力し申請書を作成する。
手続きに訪れた方が記入する必要はなく、完成した書類の内容を確認し、誤りがなければ署名して手続き完了だ。「書かない窓口」は手書きの手間が不要になるだけではない。デジタル化により、処理時間や手間を大幅に短縮している。
たとえば、申請にともなって更に他の手続きが必要なケースがある。
今までは職員が申請者の個々の事情を聞き取りして確認していたが、「書かない窓口」では、システムに用意された質問に答えてもらえば、必要な他の手続きが瞬時に洗い出される。他の窓口で手続きする際は、QRコードがついた案内票を提示すれば済む。
今後、対象手続きの拡充と、書かない窓口システムと既存のシステムの連携を進めていくことにしている。
長岡のマイナンバーカードの交付率は81.8%(1月末時点)となり、行政手続きのオンライン化実現の基盤が整ってきた。現在、マイナンバーカードを使ったシステムを利用すれば、証明書類の取得は役所の窓口へ行かずともコンビニで行える。
今後は自宅からオンラインで可能な手続きも増えていくだろう。「だれにとっても簡単・便利・親切な行政窓口」を順次スムーズに実現していきたい。
■電話健康相談にAIを導入
DXを推進する上で、AI(人工知能)の活用は必須だ。
市では、AI技術を用いた水道管の漏水調査(過去のブログ記事)をはじめ、昨年7月から全庁的にChatGPTの業務利用を開始。市職員向けにも生成AI活用の研修会を開いている。
昨年11月からはAI技術を活用した相談業務支援サービスの運用を県内で初めてスタートした。
健康相談の業務は、高い専門性と経験が求められる一方、複雑化・複合化する支援ニーズに対応することが求められている。そこでデジタル技術を活用した業務効率化によって、相談時間の確保と、職員の知識やノウハウの蓄積・継承・共有を進めている。相談の質を向上させることがねらいだ。
運用開始から3か月、電話相談に対応している保健師職員からは次のような声が挙がっている。
・相談内容がリアルタイムで文字化されるので、必要に応じ他の保健師も状況を把握できる。
電話を保留にしてアドバイスや調べる必要のある場面でも、待たせることなく答えられるようになった。
・会話が自動的に文字化されるので、メモを取る必要がなく相談に集中できる。
また、相談内容を客観的に振り返ることができる。
・相談記録票の作成に要する時間が、1件あたり10~20分短縮された。
・会議や打ち合わせの記録作成にも活用でき、作業時間の大幅な削減(従来の半分)が図られている。
新年度は、市が実施しているさまざまな相談業務(対面相談も含む)にもこのシステムを導入する予定だ。また、蓄積したノウハウや相談データをAIに学習させ、業務の改善や効率化に向けた研究・検証も進めていきたい。
今や、デジタル化、DXは、社会の当たり前の課題となっている。生成AIなどの人工知能の導入も急速に進んでいる。長岡市役所にも、こうした革新的技術をすみやかに導入し、業務効率と行政サービスの質を向上させるつもりだ。
そして、だれもが技術の進化の恩恵を受けられる、だれ一人取り残さないデジタル社会を実現し、長岡の明るい未来をつくっていく。
関 連 記 事 : だれ一人取り残さない“長岡版イノベーション”
タイトル画像 : 書かない窓口 職員が聞き取りを行い、書類を作成する。
申請者は専用の端末の画面を確認しながら質問に答え、手続きが進んでいく。