事故後9年目を迎える福島第一原子力発電所を視察した。
長岡市議会克雪・危機管理・防災対策特別委員会の皆さんと副議長も同道しての、 私とし ては二年ぶり2度目の視察となった。
管理事務所で概要説明を受けたのち、原発構内をバスで回って1号機から4号機の原子炉建屋、多核種除去設備、免震重要棟、非常用発電設備などについて説明を受けた。下に説明資料を公開するのでご覧いただきたいと思う。
「現在、廃炉はどこまで進んでいるか?」というのが視察目的だったが、「まだまだ先が見えない」というのが率直な所だ。
現在、福島第一原発の眼前の課題は「汚染水」の処理である。
原子炉の冷却水のほか、流入する大量の地下水が放射能で汚染される。これをALPS(アルプス:多核種除去装置)でろ過して62種の放射性物質は除去できるが、トリチウム(水素の放射性同位体で半減期は12.32年)だけは除去できない。このトリチウム汚染水が1日 170 トン発生する(2018年度の平均値)。
これを敷地内のタンク(現在991基)で保管しており、汚染水総量は111万トンにのぼっている。もう、これ以上タンクを設置する場所がないそうだ…。
では、どうするのか?
希釈して海に放出するか、空気中に蒸発させるしかない。
だが、どのような影響が出るのか? 国際的理解は得られるのか? という懸念がある──と東電担当者から説明があった。
事故を起こした原発を廃炉にすることの困難さは通常の理解の範囲を超える。
- 放射能汚染で人は近寄れない。遠隔操作で行うしかない。しかも、極めて高難度の作業が必要だ。それを、作業ごとに個別のロボットを開発しながら取り組むのだ。
- 2031年度末までに使用済み核燃料を取り出したいが、燃料デブリ(事故で溶融した核燃料が固まったもの)の取出し完了のめどが立たない。また、放射性廃棄物の最終処分方法が未解決なので、取り出しても、すべて敷地内で厳重に保管するしかない。 …など
見通しのつかない困難、いつ終わるとも知れぬ業務、こうした中で毎日4,000人の作業員が懸命に働いているのが、福島原発廃炉の現在だった。
原発周辺の帰還困難区域(双葉町と一部を除く大熊町)は、永遠に時間が止まっているようだ。
かっては豊富な農産物・海産物に恵まれた土地が、荒涼たる原野ヘと変わり果て、その中に今でも住めそうな住宅や店舗が点在する光景──時間を奪われた土地──に原発から10km離れた廃炉資料館からの送迎バスの車中は、言葉もなく静まり返った。
人々が活動するからこそ時間が動く。この“時”こそが命の源泉であり、価値や意味を生む仕掛けなのだ。人類の時間を止める原発事故は絶対に起こしてはならない、と改めて強く再認識した視察となった。
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写真•資料提供は:東京電力ホールディングス(株)福島第一廃炉推進カンパニー
(個人撮影不許可のため)
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