クマの出没が、県内で相次いでいる。新潟県のまとめによると、今春4月以降のクマの目撃件数は100件を超え、 長岡市内でも20件以上確認 された。(6月1日現在)
過去2年間のデータを見ると、5月から8月にかけての出没が多い。さらに留意すべきは、今年はドングリの凶作年にあたるため、夏以降もエサを求めて人里にクマが近づくおそれが高いと予想されることだ。厳重な注意が必要だ。
2年前に鳥獣被害対策課を立ち上げ、三本柱「防除・環境整備・捕獲」をかかげて対策を進めてきた長岡市では(過去のブログ参照)、地域ぐるみの取り組みと関係諸機関の連携のおかげで目に見える成果が上がっている。
この成果を土台に今年度は、対策の軸足を「持続」「拡充」「検証・研究」の3点にシフトし、戦略的に鳥獣被害対策を進化させていく。
今回は、鳥獣被害対策のその後の展開を紹介しよう。
■ 成果をキープ!
生き物が相手の鳥獣被害対策は、油断すれば元の木阿弥。つまり、これまで地域や集落が取り組んできた各種対策の成果を、いかに「持続」させていくかが重要となる。
①電気柵の設置
電気柵の設置は被害防除の核だ。
長岡市は、電気柵についての研修会を集落、農家組合単位で開催し、同時に貸し出しや購入に対する補助制度で取り組みを支援してきた。
昨年度の貸し出しは約60団体、購入補助は80件以上にのぼり、今年度もすでに30件以上の申請が寄せられている。
一方で、高齢者が多い集落では設置そのものが困難だということもわかってきた。そこで、研修会の対象を地域住民だけでなく民間事業者などにも広く呼びかける方法に切り替えている。「募集型」の研修会として開催することで、設置協力の人材を確保し、この課題に取り組む人のすそ野を広げていく。
②鳥獣緩衝帯を維持管理
昨年度からは、鳥獣を寄せ付けない鳥獣緩衝帯の整備費用の支援もしている。すでに12地域で取り組んだ。ただ、緩衝帯の管理は継続的に行う必要があるため、今年度から、整備した緩衝帯の「維持」に必要な費用(除草剤や草刈り機の燃料代など消耗品の購入ほか)の補助もしている(上限3万円)。
長岡市鳥獣被害対策協議会※と連携し、緩衝帯の新規整備と維持・継続を両輪で進める構えだ。
※鳥獣被害対策協議会:2021年設立。JA/新潟県農業共済組/魚沼漁業協同組合/新潟県猟友会長岡支部/長岡市で構成。関係機関がより一層連携し、情報共有を図り、鳥獣被害対策に取り組んでいる。
▲緩衝帯の整備:獣が隠れられないよう草をきれいに刈り、境界線を明らかに(写真左整備前 / 写真右整備後)
■ GPS+広報
さらなる拡充にも力を入れている。
栃尾地域では、サル被害対策として、遠隔操作が可能な大型檻による捕獲、GPS首輪による群れの行動範囲・移動経路の把握を進めている。現在2つの群れに装着しているGPS首輪を、今年度は、4つの群れすべてに装着する。加えて、収集した情報を鳥獣被害対策実施隊や地域住民と共有し、捕獲の可能性の高い場所にわなを仕掛けるなど、効率的に対策強化してゆく予定だ。
対策を進化させるためには、農作物被害調査を通じて被害の現状を知ってもらうことも大切だ。対策の必要性、市の支援制度、研修会、地域の実情に合わせたアドバイスなど、鳥獣対策で成果が上がることを認識してもらい、次なる「対策の実施」につながる広報も進めてゆく。
■ 今後もつづける検証と研究
対策を進めていく中で、新たな課題とともに新戦略へのトライアルも始まっている。市は関係機関と連携して検証や研究を進め、解決の糸口を探っている。一例をあげると──
○カモによる大口れんこんの食害対策
⇒レーザー照射による追い払いの効果検証、新型忌避レーザーの研究
○「ハナレザル」への対策
⇒定着させない・群れを作らせない対策、住民対応マニュアルの検討
○クマに対する防除
⇒電気柵の有効性の実証実験
これらの検証や研究の結果を基に、地域ニーズを踏まえながら、新たな支援メニューの展開の有効性や可能性を科学的に探求していく。
今後も、各地域の実情に適った支援の継続・充実のため、有害鳥獣捕獲のスペシャリスト鳥獣被害対策実施隊をはじめ、地域住民、関係機関、民間事業者とタッグを組み、オール長岡で粘り強く取り組んでゆきたい。ご意見などはお気軽に各支所、または鳥獣被害対策課へお寄せいただきたい。
関 連 記 事 : 害獣対策、進化中
タイトル画像:
鳥獣被害対策実施隊PRポスター(コミセンなど公共施設に掲示中)から。隊員は、有害鳥獣の捕獲やパトロールなどに取り組む、まさに「地域を守るガーディアン」だ。