昨年(2022年)の日本国内の自殺者は2万1,881人で、前年(2021年)から874人増加している今月14日、警察庁自殺統計に基づく厚生労働省のまとめ )。

長岡市の過去10年の自殺者数は、2014年の84人をピークに年々減少し、2018年には48人と最少の数字となったものの、翌年から増加に転じ、新型コロナウイルス禍の2021年の自殺者63人となってしまった。市独自のプランで一時減少に転じた自殺者数だが (過去ブログ参照) 、この問題は社会情勢に大きく左右されるため全く油断ができない。自殺の防止は大きな課題だ。なんとしても自殺ゼロを実現し、だれしもが幸せな人生を全うできる明るいまちにしなければならない。

今回は、長岡の自殺防止に向けた取り組みの現在に、フォーカスしてみたい。

 

どの年代でも男性が女性の約2倍(R3年のみ女性が男性を上回った)自殺で亡くなっている

 

 

■SNS相談から「つなぎ支援」へ
「生きづらびっと」の画面


先月17日、長岡市はNPO法人自殺対策支援センターライフリンク自殺対策SNS等相談連携事業に関する協定を取り交わした。

ライフリンクでは、LINEやWEB上から悩み相談を受け付ける「生きづらびっと」や、電話による相談「#いのちSOS」など、SNSを活用した相談事業を先駆的に取り組んでいる。SNS相談の6割は29歳以下の若年層からで、若者の自殺対策の実績・ノウハウも豊富である。


協定により、ライフリンクに寄せられた相談のうち、自殺リスクが高く具体的な支援が必要と判断された相談者の情報が(本人の同意を得た上で&長岡市民のみ)、市に提供される。これにより、保健師の対面相談などから具体的な支援に結び付ける「つなぎ支援」が可能となる。

 

手元のスマホなどで昼夜いつでもつながることができるSNS相談は、もちろん匿名性もしっかり保証されており、大変相談しやすい。特にこれまで相談の少ない層、若者や現役世代の相談を呼び込みやすく、有効な支援に結び付けることができるだろう。

これから、ライフリンクの専用アカウントを記したカードの配布と、市職員向けスキルアップ研修会を予定している。

 

■救いの網〜多岐にわたる連携もう

自殺(自死)には、さまざまで複雑な背景がある。その衝動にかられることは誰にでもありうる。その決断を予見することはかなり困難だが、衆知を集め協力すれば、未然防止はできるはずである。

この信念のもと、長岡市は、自殺対策計画(2019年)を策定し、関係機関との連携体制をつくり、自殺防止の相談・啓発に取り組んできた。特に「高齢者」「職域層」「若者」の3領域に重点に置き、次のようなさまざまな対策を推進している。

 ・市保健師による相談(電話や対面)・訪問、関係機関との情報共有・連携
 ・臨床心理士や精神保健福祉士による個別相談「こころの相談会
 ・女性団体(ウィルながおか/女のスペース・ながおか等)やスミレプロジェクトの相談事業、相談員の研修
 ・庁内の「長岡市自殺対策推進チーム」による情報共有と支援強化
 ・医師会/臨床心理士会/警察/労基署/保健所/大学とのネットワークによる専門的知見を活用した支援
 ・地域包括支援センターや民生委員などと連携した、高齢者の相談
 ・コミセンでの「こころの健康づくり講座」開催

こうした活動に携わる方々は皆、自殺は未然防止が可能であるという認識をもち、相談者の不安や悩みを受け止めるだけでなく、あらゆる場面や機会を通じて自殺につながる兆候や情報のキャッチに努めている。そして、必要とする支援につなげるため、多岐にわたる分野の関係者が連携しチームとなって取り組んでいる。

 

■ 気づき、見守り、つなげる~ゲートキーパー養成~

ゲートキーパー研修〜子どものSOSの受け止め方 (昨年7月/教職員向け)

 

自殺防止と支援の輪を地域全体にも広げるため、自殺の危険を示すサインに気づき、見守るゲートキーパー養成に取り組んできた。養成されたゲートキーパーの数は約2,300人にのぼる。

  1. 市の担当職員も養成講座を修了したゲートキーパーである。窓口相談の内容が自殺につながる可能性があると判断した場合には関係機関の支援にしっかりつなげることになっている。さらに、民生委員・児童委員やコミセン職員、地域包括支援センター職員母子保健推進員、教職員など幅広い分野の関係者が受講くださっており、それぞれの活動の中で自殺予防のアンテナを張り、セーフティネットを広げている。

  2. 加えて、職域層(働く人)の自殺者が多い傾向にあることから、長岡市では今年度から長岡商工会議所の健康・医療福祉部会の企業を対象にゲートキーパー研修を実施、また、「はたプラ」賛同企業に相談窓口や各種講座・講演会の案内などで働きかけを行った。
    受講してくれた企業の経営者や人事担当者から、「話すきっかけづくりや傾聴の重要さがわかった」「今後は社員への目配り、気配りを行っていきたい」といった真剣な声が届き、NAGAOKAながおかで働く=質の高い働き方・・・という意識が培われてゆくことを頼もしく感じている。

  3. さらに新年度は、コミセンでの講座を実施し、地域全体で自殺防止の意識を醸成していく。

 

昨年10月、国は自殺総合対策大綱の見直しを行い、女性への支援強化を重点施策とし、新型コロナウイルスの影響を踏まえた対策や、子ども・若者の自殺対策のさらなる推進強化が示された。


市は令和3年度から、一部の小中学校で保健師による「SOSの出し方に関する授業」を実施している。
来たる5年度は、第2次自殺対策計画(6年度から実施)を策定するが、さまざまな社会情勢の変化に応することができるよう適切な取り組みのあり方を議論をし、計画に盛り込む予定だ。

 

さあ、たゆむことなく誰も自殺に追い込まれることのない長岡、自殺自死ゼロの明るいまち長岡をめざしていこう。

 

 

 


   関  連  記  事 :
 自死、減少へ

               
 タイトル画像:
 NPO法人自殺対策支援センターライフリンクとの 「自殺対策SNS等相談等連携事業に関する協定」締結式(2月17日)。右は同法人清水康之代表。