11月6日(日)、世界初の「世界錦鯉サミット」が新潟県で開催された。前日には 錦鯉発祥の地である長岡市に、17か国約30人の駐日外交団 (大使、公使ほか)の皆さんが視察ツアーに訪れた。
一行は、道の駅ながおか花火館、小千谷市で開催中の新潟県錦鯉品評会、山古志の棚田・棚池を見学。錦鯉はもちろんのこと、長岡花火の勇壮さや豊かな食文化をも、海外に向けて大きく発信できたことを大変うれしく思う。
錦鯉や花火の他にも、長岡市には、海外から高く評価されているものがある。今回は長岡が世界に誇る火焔土器、火焔型土器の話題である。
■火焔土器、火焔型土器の魅力に触れる
馬高遺跡(長岡市関原町)は、縄文時代中期(今から約5,000年前)の大規模集落で、火焔土器が出土した遺跡として広く知られている。
火焔土器は、昭和11(1936)年に近藤篤三郎さんが発見した縄文式土器の固有の名称で、この名称の土器は世界にこれ1つしかない。燃えさかる炎をイメージさせる造形から「火焔土器」と名付けられた。縄文人のすばらしい美意識とエネルギー(情熱?)を感じさせる世界的な遺産だ。
これ以降に発見された、似たような形の土器は「火焔型土器」と呼ばれ、長岡地域をはじめ、栃尾・三島・与板地域や、県内の信濃川中流域の遺跡から多数出土している。馬高縄文館では、火焔土器や多くの火焔型土器を中心に、馬高・三十稲場遺跡での縄文人の生活や文化を分かりやすく紹介している。同じエリアにある新潟県立歴史博物館で展示されている土器はレプリカ中心だが、馬高縄文館は実物メインで展示している。ぜひご覧になってほしい。
昨年7月、「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されたことをきっかけに、現在、ちょっとした「縄文ブーム」が起きている。
優れた技術と高い精神性を持ち、自然と共生した豊かで成熟した縄文時代は、武力による争いの無い平和な暮らしを営んでいたといわれている。自己の利益追求のために争い続ける世界の現状の中で、まさに縄文時代があらためて大きな注目を集めているという。
市民のみなさんにも、馬高縄文館で火焔土器や火焔型土器から伝わってくるエネルギーに触れ、自然とともに生きた縄文人の平和な生活を想像するなど、縄文時代を体感いただきたいと思う。
■長岡の火焔土器、火焔型土器を世界へ
9月30日(金)から、イギリスで、英国の世界文化遺産ストーンヘンジ・ビジターセンターの特別展「環状列石 ストーンヘンジと日本先史時代」が始まった。この中で、市内の岩野原遺跡で出土した火焔型土器1点が展示され、展示会のシンボルとして注目を浴びている。冒頭のタイトル画像は、特別展の主催者である英国の歴史的建造物保護機関「イングリッシュ・ヘリテージ」のホームページトップで、火焔型土器への関心と評価の高さがうかがえる。
この特別展は英国のセインズベリー日本藝術研究所の統括所長サイモン・ケイナー博士が橋渡し役となって実現した。平成28(2016)年から始まった大英博物館での長岡の火焔型土器の展示をコーディネートしたのも同氏である。
世界中から年間100万人の観光客が訪れるストーンヘンジで、長岡の火焔型土器が展示されることは大変名誉なことだ。この特別展をきっかけに、火焔型土器の造形美や縄文文化の魅力が広く伝わっていくことを期待している。
※ストーンヘンジ(Stonehenge):英国南部ソールズベリー平原にある環状列石(ストーンサークル)。直立した巨石が円形に並び、それらを囲む土塁が残されている。先史時代の遺跡で、その造営年代は縄文時代後半とほぼ重なる。世界文化遺産として1986年に登録。英国の国家遺産として保有・管理されている。
また、先月28日(金)には、総務省の「映像コンテンツを活用した地域情報発信」実証事業に、長岡市の「火焔土器を通じたNAGAOKAの魅力発信」が選定された(全国で22件選定)。これは、映像コンテンツを活用した総務省の情報発信事業の1つで、火焔土器をシティプロモーションの核とした映像コンテンツをつくり、展開実績が少ない英国とフランスに向け、来年1月から2月にかけて発信し、その効果を検証する。
火焔土器は単なる過去の遺物ではなく、長岡が誇るパプリックドメイン(人類共有の財産)だ。
縄文文化の象徴──世界で唯一の火焔土器──をはじめ、ストーンヘンジビジターセンターや大英博物館でも展示されている火焔型土器の魅力とともに、これからも世界に向けて、長岡からのメッセージを届けていきたい。
関 連 記 事 : 河口洋一郎 ~beyond AI~
タイトル画像: イングリッシュ・ヘリテージ財団のホームページ