いま、「仮想山古志プロジェクト」が注目を集めている。
インターネット上に仮想の山古志空間をつくり、アイデアや資金を集め、 現実の山古志の 課題解決に活かしていこうという山古志住民会議の企画だ。開発運営の経費は国の補助金と、電子住民票を兼ねたデジタルアートを販売してその売り上げを充てる。国内はもとより、世界でも初めての取り組みではないだろうか。
■デジタルアート(デジタル仮想住民票)購入が住民税
錦鯉(山古志を中心とした「二十村郷」が発祥の地)が描かれている電子住民票(デジタルアート)は、NFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)というデジタル技術を使い、複製や改ざんができない仕様になっている。
昨年12月14日(月)から販売した第1弾デジタルアート「Colored Carp」(錦鯉)の価格は、仮想通貨(暗号資産)のETH(イーサリアム)で1点0.03ETH(販売当時 約1万5,000円)で、現在約350人が購入、その1割は海外の方だという。電子住民票(仮想)を兼ねたアートの購入者は、自動的に仮想の山古志住民(デジタル山古志村民)となり、専用のコミュニティチャットで運営側から発信される山古志の現状などに対して、意見交換することができる。
■デジタル村民による総選挙を開催
さきごろ、山古志住民会議がデジタル村民に対して、山古志地域のためのアクションプラン(事業プラン)を募集したところ、12のアクションプランが集まった。この中から、デジタル村民約350人による初めての総選挙( 2月26日(土)〜28日(月))で4つのプランを採択した。
総選挙にあたり、デジタル村民から「実際に山古志に住む人からも選挙に参加してもらってはどうか」という意見が出され、村民全員の賛同を得て、今回はリアル住民も選挙に加わった。
総選挙の結果、バーチャル山古志でリアル住民とデジタル村民をつなぐ新しいコミュニティの形成や、デジタル村民が実際に山古志に行き、写真等を通じて山古志の魅力を発信する取り組みなど、4つのプランに決定した。
一位となったプランは「デジタル村民10人が山古志を訪れ、訪問写真で一番いいものをNFT画像にして、ふるさと納税の返礼品にする」というもの。
これらプランを、住民会議とデジタル村民たちがこれから実行に移していく。もちろんリアル村民とコミュニケーションを取りながら、民主的に──。予算には、デジタルアートの売上の30%(約100万円)を充てる。
山古志地域の人口は、2004 (平成16)年の 中越地震の前後で2,200人から830人に減っている。急速に過疎化が進行し、地域活動の担い手も高齢化して、従来の地域運営では解決が難しい課題が山積している。こうした課題解決のためのアイデアや資金を、山古志住民とデジタル村民で協力してして生み出していくことは、まさにDXによる地域づくりの可能性を予感させるものだ。
■デジタルアート第2弾、販売中!
先週3月9日(水)の正午から、デジタルアート第2弾「Generative patterns “NISHIKIGOI“」の販売も始まった。第2弾はその名の通り「自動生成される錦鯉」のようだ。
販売額は第1弾と同じく1点0.03ETH(3/11現在約9,000円)で、すでに約100人が購入。
第1弾と併せると、約450人のデジタル村民がデジタル山古志に住むことになった。山古志の人口約800人に加えて、新たに転入(?)したデジタル村民約450人のみなさん、よろしく。これからのプロジェクトの取り組みによってデジタル住民が増え、現実人口を超える日も近いかもしれない。
追記:3月15日現在、第1弾と第2弾の販売合計は803枚となり、山古志地域の人口830人まであと少しに迫っている。
いま、世界中でインターネット上の仮想空間「メタバース」を活用したビジネス、取り組みが加速している。こうした中で、仮想通貨の投機性が問題視のが、現実世界との通路をいかにつくるかが課題になると思う。そして、メタバースが現実世界の価値を上げていくものになってほしいと切に願う。
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タイトル画像: デジタルアート第2弾「Generative patterns “NISHIKIGOI“」