お聞きおよびだろう、長岡市域でも、野生鳥獣による農作物被害が年々増加している。 しかも、自家消費される中山間地域の畑の被害は、統計上、 出荷作物の被害には含まれないので、公表される数字以上に影響は大きい。 ⇨  表1
生きがいとしての農作物を食い荒らされると、がんばって中山間地で暮らす意味も価値もなくなってしまう──という嘆きを伺うことがある。

鳥獣被害を減らすにはどうしたらいい?
「徹底的に駆除すればいい」という意見もある。他方、人知の及ばぬ巧みな循環(命の輪-命の和)で成り立っている生態系はそう単純ではない。
今、世界は新型コロナウイルスに席巻されているが、むやみに人間が生態系に手を突っ込むと未知のウィルスを掘り起こすようなリスクにもつながる。

とはいえ、私たちはこの生態系の頂点に立つ霊長類の長。理性と責任をもって、生物個体数の適正管理(捕獲)をなしうる唯一の存在だ。
柵の設置等による侵入防止対策と、放任果樹の伐採、刈払いによる餌場 ・隠れ場の撲滅などによる生息環境管理も含め、かしこくやっていかねばならない。

 

基本対策は3つ
○ 個体数の適正管理
○ 侵入防止対策
○ 生息環境の管理

 

鳥獣被害対策実施隊によるクマ用ワナの設置(山古志種苧原たなすはら

市は、令和2年度に鳥獣被害対策を本格化する。
▪️まず、ワナの数を増やし計画的な捕獲に力を入れる。
▪️実施隊の担い手である狩猟者の新規免許取得が伸び悩んでいるため、取得費用等の一部を助成する。

▪️サル被害が増加している栃尾地域でのテレメトリー調査(生息調査)と捕獲による個体数の調整
 ※ 栃尾では3つの群れ(60・50・35頭)が確認されている。適正(40頭)より大きい群れの分裂を防ぎ、被害の縮小・拡大防止を図る。

サル用電気柵の設置(栃尾上来伝かみらいでん


▪️集落が全体で正しい理解を深めるための研修会を実施する。
 野生動物が入らぬよう、専門家から動物の生態や対策情報を得る。市の職員も一緒に、たとえば、収穫しない柿の木や隠れ場所になる雑木や茂みをなくしたり、つねに人の存在を示す工夫などを考える。

▪️電気柵等の被害防除導入──試験的な電気柵の貸与を増やし、設置管理を実体験してもらう(R1:4か所→R2:14か所)。
 ※ 電気柵を導入する集落に、専門家が安全で効果的な設置法を伝授。

こうして、地域共生・市民協働の取り組みとして、粘り強く科学し、話し合いながら続けていこう。
野生の動物たちに言葉は通じない。でも彼らはそれぞれに賢い。ご先祖様や地域の歴史に思いをはせるとき、彼らと私たちとの間に、暗黙の約束・ルールがあるはずだと感ずる。彼らにもその約束を思い出してもらおう。

 

  表 1 
  
出没件数出荷農作物被害額 (家庭菜園,漁業・農業土木被害を除く)

    H25 H26 H27 H28 H29 H30 R 1
   ツキノワグマ   38 97 70 104 139 66 146
   イ ノ シ シ 13 17 20 80
   ニ ホ ン ジ カ
  合  計 41 110 76 110 158 94 228
  農作物被害額 (千円)   6,037 17,231 5,865 6,743 10,596 14,011 調査中

※R2.3.10現在までの数




   関  連  記  事: “見守り”に新たな力
 タイトル画像:
大積地区にイノシシ出現(2019.12.17) 
    学習力が高いイノシシは前年の餌場を記憶するという。
    鼻が利くため、餌場の開拓力があり、「いい餌場だ」と誤まって学習されてしまったら、被害にあう。誤学習を修正してもらわねば…。いや、まず、ウチの田畑は餌場ではないと教えよう。